2012年3月11日

「●年●月●日、あなたは何をしていましたか」 。そう聞かれて即答出来る日なんて、人生の中で数えるほどしか無い。その数えられる日のひとつが、2011年3月11日。
先週あたりからだろうか。テレビでは、あの日の凄まじい映像がたくさん流れている。 「サンテンイチイチ」 という音とともに。 「サンテンイチイチ」 は、言葉としてではなく、ただの音として耳に入ってくる。記念日や何かの記号のように言われ続けている 「サンテンイチイチ」 に違和感、嫌悪感を覚える。それは、 「キューテンイチイチ」 の時から思っていたこと。へそまがりだから。


東京から岩手県宮古市までの深夜バスの切符は早々と売り切れ、新幹線と在来線を使っての日帰りは厳しいため、今日は宮古に帰ることができなかった。休みを取っていたんだけど。でも今日は、海の前に立ちたかった。
『東京から行ける太平洋、且つできるだけ東』 と決めて調べ、千葉県の犬吠埼に行くことにした。浜松町から犬吠埼までは、バスで片道3時間。2時46分には間に合うし、今日のうちに帰って来られる。


銚子駅から銚子電鉄に乗り、犬吠駅で降りた。電車を降りると、海の町の匂いがした。海の町で育った人にしか感じることができない、何とも言えない懐かしさ。

犬吠埼の君ヶ浜に着くと、海は大きく荒れていた。いや、外海だから、これぐらいだと荒れているとは言わないのかもな。宮古は湾で、海がとても穏やかで波音も静かだから。


携帯電話で写真を撮り、お母さんにメールを送った。内陸に引っ越した自分たちも宮古には行けないから家の仏壇で手を合わせる、と朝早くにメールをもらっていたから。
すぐに返信があった。 「懐かしい海だ!波が荒れているねぇ。きっと手を合わせた気持ちは、天に届くと思うよ」 と。お母さんも海育ちだもんね。



しばらく、荒れる海を眺めた。波は、次々と頭を上げては打ち寄せてくる。風が強く、波しぶきが飛んでくる。漬物石ぐらいの大きな石がゴロゴロしている海岸の外れで、持ってきたカップ酒の蓋を開け、岩の上に置いた。岩手のお酒。口ギリギリまでお酒が入っているので、開けた瞬間に少しこぼしてしまった。
「もっきりだぁねぇ、こりゃぁ」 とつぶやき、ニヤリとした。


2時46分。もっきり越しの海に、手を合わせた。目を閉じるといっそう、波の音が体中に入ってきた。
今日は、2012年3月11日。