よみがえる記憶


このあいだ、図書館に行ったときのこと。持ち出し禁止、館内で読むコーナーの雑誌の山で、月刊誌 『東京人』 最新号を見つけ、その表紙に書かれている文字に驚いた。
「インタビュー つげ義春


1987年以降、創作活動を休止されているが、今でも人気は衰えていないそうだ。そうでしょう、そうでしょう。


初めて読んだのは高校生、いや中学生の頃だったかな。つげ義春作品から、世の中の影の部分、触れてはいけない世界、そういうものが存在することを知った。そしてその頃、つげ作品を読んでいること自体、周りの誰にも言ってはいけないような気がしていた。


自己から解放され、自己意識も消えて、この世に「いながらいない」ような状態・感覚かぁ。
つげさん、また描いてくれないかなぁ。
いまは、ずっと心を病んでいる息子さんとふたり暮らし。数年前に奥様を亡くされ、家事に追われて一日が終わるそうだ。
とにかく、お元気そうな顔写真にホッ。




そして、その日に予約をし、やっと手にした 『現代漫画12 つげ義春集』 。
私が読んでいたつげ作品は文庫サイズだったから、ハードカバーで読むのは初めてだ。しかも初版。私が生まれる前に発行された本を、いまこうして手にしているというのは、感慨深い。
「この本は古くて痛みが酷いので、大事に扱ってくださいね」 という内容の図書館からのお願いメモが挟んである。たくさんの人に読まれてきたんだねぇ。


午後の熱く湿った風がカーテンを揺らす部屋で、汗をかきながら一気に読んだ。つげ作品は、こういう空気で読みたい。エアコンが効いた部屋で読んではダメだ。勢いで、もう一冊の 『つげ義春全集1』 も読み終わった。全集は少しずつ、最後の別巻まで読まないと。
現代漫画の裏表紙をめくると、懐かしい姿が!茶封筒を小さくしたような袋の中に、貸し出しカード。そうそう、これが昔の貸し出しの形だったよね。小学校の図書委員だった頃を思い出した。
あー、懐かしくってゾクゾクするよ。ここに入っているカードは単なる本の管理用のようだけれど、あーホント、懐かしい。本ってイイね。