廃校の梅の木

朝、最寄駅から会社までの通勤路に、廃校になった小学校舎がある。
いまは区民に開放されていて、地域のイベントやサッカー教室などに利用されているようだ。
東京の、特に都心の学校は校庭が狭く、土が少ない。ラバーマットの校庭を多く見掛ける。
こんな狭い校庭で運動会なんかできるのかなぁ、と田舎育ちの私は思う。
応援に来てくれた家族とは、どこでお弁当を食べるんだろう。


うちの小学校は全学年1クラスずつしかなかった。
6年間ずっと同じメンバーなので、お互いが何でも知っていた。
頭がイイ子、足が遅い子、字が上手い子、お漏らしした子、キュウリが食べられない子、みんな周りにバレている。いま思えば、すごい環境だった。
すごい環境と言えば、夏の体育の授業。広い校庭にプールはなく、水泳は海だった。
小学校も中学校もプールがなかったから合わせて9年間、夏の体育は海。
どちらも学校の前が海だったので、体育の時間は全員で海に行き、自由にバシャバシャ泳いだ。
先生は砂浜に居て見ているだけ。ラクしてたなぁ、センセ。
正しい泳ぎ方など習ったことがなかったので、高校で初めてプールの授業を受けた時には困った。
大人になった今でも、プールでは泳げない。


廃校の水が抜かれたプール脇には今日、梅の花が咲いていた。
きれいに咲いたこの梅も、子供の声が少なくなって寂しがっているだろう。
幹には 「ウメ」 と書かれた古びた札が巻かれたままだった。