魔法のコトバ

ふと、自分に何かあったときのことを考えることがある。
人はいつ、どうなるか分からない。明日、事故に巻き込まれるかもしれないし、部屋でひとり、倒れてしまうかもしれない。そしてそのまま、誰にも気付かれないかもしれない。特にひとり暮らしをしていると、そんなことを考えて、とても怖くなるときがある。


馬鹿げたことかもしれないが、私の携帯電話には、 「その時」 のためのコトバが下書きメールとして保存してある。この時代、何かあったときに周りの人たちが最初に確認するのは、携帯電話だと思うから。あ、部屋に置いてある日記帳を読まれるのだけは嫌だな。
気付いてくれるかなぁ、私の考えていたこと、私からのメッセージ。
その中に、 「もしお別れの式をしてくれるなら、この曲を流して、このメッセージを渡して欲しい」 と書いてある。 「この曲」 というのは、スピッツの 『魔法のコトバ』 、 「このメッセージ」 というのは・・・内緒。



この曲を聴く時はいつも、亡くなった親友のことを思い出す。中学では三年間、同じクラス。高校は別だったが、よく夜中に家を抜け出し、公園のブランコに座って、いろんなことを話した。
夜の空気、ブランコのギコギコ音、親友のクシャっとなった笑顔、公園の入り口に並んだ2台の自転車、キレイな爪の形。いろんな 「その時」 の画が頭に浮かぶ。もう、ずっと昔のことなのに。


あの時、親友と私が交わした言葉は、ふたりの記憶にしか存在しない魔法のコトバ。
あの時、あの場所で話したコトバは、ふたりだけの秘密のコトバ。
もう、一緒に思い出して語り合うことができない、永遠に音になることのないコトバ。



会いたい人たちがいる。
歌詞にある 「その後のストーリー 分け合える日」 のために、会いに行こう。もう少し、秋が深まったら。



スピッツ 『魔法のコトバ』 】  歌詞