帰省五日目、事故から十二日目


土曜日。学校も、仕事も、デイサービスも、みんなお休み。
ゆっくりと起き、次々とリビングに集まる家族。いちばん最後まで寝ていたのは、やっぱり上のチビだった。 「大丈夫か?」 と言いながらお兄ちゃんが部屋へ様子を見にいって暫くすると、チビが起きてきた。ぐっすり眠れた、とのこと。良かった、良かった。


今日は、チビふたりの買い物で電気屋さんに行くという。ついでに退院した病院に診断書を取りに行くので、私を家の最寄駅ではなく、盛岡駅まで送ってくれるそうだ。わーい、ありがとう!
おばあちゃんにおにぎりを2個作ってもらい、荷物をまとめ、お昼前に家を出た。じいばあは留守番なので、家でバイバイだ。 「おじいちゃん、無理しないでゆっくり歩いてね。行ってくるよ」 と言い、握手をした。おじいちゃんは笑いながら、ギューと強く手を握った。今まででいちばん、力強い握手だった。きっと、自分は大丈夫だよ、ということを伝えるために、強く握ったのだろう。
最近、見送る時は涙目になるおばあちゃん。今日はチビたち家族も一緒だったからか、泣かずに外で手を振って見送ってくれた。



車の中では、チビふたりと一緒に並んで座った。下のチビおススメの、美味しいたまねぎドレッシングの話で盛り上がった。何で、この話になったんだっけなぁ。次にチビが入院する病院では、好きな調味料を持って行ってイイらしい。下のチビがあまりに熱く語るもんだから、お姉ちゃんも 「ドレッシング、持って行こうかなぁ」 なんて言っている。いつもの車内のおしゃべりだ。
みんなで笑ったり、ちょっとモメたり、また笑ったりしながら、あっという間に駅に着いた。


ふたりのチビとハイタッチをした。下のチビは、 「約束のCD、待ってるね」 とパチン!上のチビは 「じゃぁね、頑張るよ」 とパチン!
上のチビは、私を見送る時によく泣いたものだが、今日は笑顔だった。
後ろから別の車が来ていたので 「もう行っていいよー」 と言うと、お兄ちゃんの運転する車は走り出した。上のチビは窓を開けて腕を出し、ずっと振り続けていた。顔を出せるほど、体が動かないのは分かっている。それでも腕を出し、私から車が見えなくなるまでずっと、手を振り続けていた。ひとり残った私も、手を振り続けた。うー、泣けるじゃないかっ!
頑張れ!チビ。


この子の歩いて行くその先が、光に満ちていますように。