土に還る


それは昨日の朝のこと。
出勤前に、タワービルの1Fにあるコンビニエンスストアに寄ろうと向かっていたところ、足元にキレイな蝶が。写真を撮ろうと近付いたところ、羽根をバタつかせるが飛び上がれず、くるりと回った。それが2〜3度続いたとき、気付いた。
この蝶、飛べないんだ。


ネットで調べると、アカボシゴマダラという蝶のようだ。アゲハチョウよりひとまわり小さいぐらいだろうか。模様がくっきりと美しい。どうしたものかと考えたが、人通りが少ないビルの敷地内だったので、そのままにして出勤した。そのうち飛ぶだろう、ぐらいの気持ちだった。


昨日は仕事で外出し、戻ってきたのが14時。かなり暑くて汗をかいた。飲み物を買うためにコンビニエンスストアに向かいながら、朝の蝶を思い出した。今朝の場所にはいない。周りを探してみたところ、朝よりも更に奥まった場所に、居た。自分で動いたのかもしれないし、誰かが移動してあげたのかもしれない。
近付くと、朝と同じように逃げようとするが、やはり飛べない。朝よりも元気が無いように見えた。そして、数日前のミミ子のことを思い出した。


バッグの中にあった書類を使い、蝶を植栽の根元に移動した。元気なら植栽の上に放すところだが、飛べないのなら、と根元の土と枯葉のところに置いた。


今朝、植栽の根元には、動かなくなった蝶が羽根を広げていた。土と枯葉には不似合いな、鮮やかすぎるほどの模様。昨日と同じように、キレイだった。