寂しくなるなぁ


東京メトロ赤坂見附駅、Bの出口を出て国道246号線沿いを青山方面へ少し歩くと、ビルの1Fにある 「茶房 智慧の木」 。
以前はカメラや写真の現像を扱う 「カメラフレンド」 と一緒にやっていたが、数年前にカメラの方は営業を終了し、喫茶店のみ営業を続けていた。
その智慧の木が、1月いっぱいで閉店した。


ガラス張りのお店に閉店のお知らせが貼り出されたのは、閉店1週間ぐらい前だったかな。
「開店以来三十二年、店、店員とも年寄りになり、元気なうちに余暇を過ごしたく思い、一月末日を以て完結することにいたしました」 と。
完結かぁ。あの店主らしい言葉だなぁ。そう思いながら眺めた。


ガラスはいつもピッカピカ。お店の方はビシッと白いワイシャツでキメ、毎朝ガラス越しにニッコリご挨拶。このニッコリが、私の通勤の楽しみのひとつだった。
これほどデジカメが普及する以前、フィルムカメラが主流だった頃は、週に何度も写真の現像を頼んでいたんだよね。懐かしいなぁ。あれからのお付き合いで十数年、赤坂見附はお店の入れ替わりの多い街だが、赤プリが無くなっても、このお店だけはずっとあるような気がしていた。残念でならない。


1月の最後の土日、どちらの日の朝だったかなぁ。既に閉店してシャッターが下りていたが、店主とそのシャッターの前でばったり会った。
「もう、びっくりしましたよ。ここだけはずっとあると思ってたから。見てもらいたい古いカメラもあったのに。寂しくなっちゃう」 と言うと 「はははっ!もう30年以上やってきたからさぁ。足腰が動くうちに、旅行に行ったり、いろいろやってみたりしたいからね」 とすっきりした顔で話してくれた。 「ここをやっていると、長い旅行なんてできなかったからね」 と店主。そうだよねぇ、お店が休みの土曜日は業者さんのお掃除に立ち会っていたもんねぇ。
「じゃ、これからの毎日、楽しんでくださいね」 と言うと 「ありがとう!」 と片手を上げて、ビルに入っていった。人生、次のスタートを切った店主の背中は、とても若々しかったなぁ。
今までありがとうございました!