エスカレーターについて

毎朝、地下鉄で通勤している。
最寄り駅には 「ホームから改札」 「改札から駅ビル」 「駅ビルから地上」 と3機のエスカレーターを乗り継ぐことになる。幅の広いエスカレーターでは、立ったままの人は左側、上る人は右側、という暗黙のルールがある。
関西では立ち位置が逆という話を聞いたことがあるが、京都に行った時には東京と同じだったような気がする。


朝のエスカレーターの中で、最後の地上に出るエスカレーター3号機だけは幅が狭く、ひとり分しかない。朝は急いでいる人が多いので、歩いて上る人が多い。そこで毎朝の戦いが心の中で起こるのだ。


「立ち止まって乗るべきか、はたまた歩くべきか」


2号機の幅広エスカレーターから3号機に乗り換える10歩ほどの間、脳みそフルで考える。
『前の人が歩いているなら自分も流れに乗って歩く、止まっているならラッキー! お願い、誰か歩かず止まって!』
というのがいつものパターン。


だが、ここ暫くは腰痛が酷く、普通の道を歩くのも辛い状態になってしまっている私。3号機では立ち止まりたいのだが、自分の後ろの人たちが「歩けよー!」と心の中で言っている気がしてならない。
2号機から3号機に乗り換える10歩の間で、自分の中の緊張がピークに達する。
『前の人は歩いているけど、私の番から止まるからね』 と心の中で言いながらステップへ。
そして、歩かずに止まる。前の人は歩いているので、どんどん遠ざかっていく。
もう、後ろは見ない。というか、怖くて見れない。
「チッ、急いでいるのに立ち止まるなよ。歩けよー!」 という皆様の"気"が、背中からビンビン襲ってくる(…気がする)。
そんな後ろの皆様に 「急いでいて歩きたいなら、脇の階段の方を使えよー!」 と言い返す(…もちろん心の中で)。


ステップに乗った瞬間からは、腰を擦る演技を忘れない。
痛いのは事実なのだが一応、後ろの皆様に 『私は腰が痛くて歩けないんです。みなさまゴメンなさい』 というアピールをしておかないと。
何で毎朝、エスカレーターに乗るのにこんなに気を使わないといけないのだろう。。。腰痛さえ治れば苦労はしないのに。


たまに自分の数人前で、流れを止めて堂々と立ち止まる人が居る。
『うぉぉー!神様のような人だ!』 と感激する。降りたあと追いかけて行って、握手をしたくなる。
『ありがとう!あなたのおかげで、心労ナシに堂々と立ち止まったままエスカレーターに乗れました!』 とか言って、涙ぐみ…。






毎日、こんなことを考えながらエスカレーターに乗っている人っているんだろうか。
何か、アホだ。


私を悩ませる3号機の地上出口。
これは、晴れている日バージョン。

以前、田舎の小学生の姪が初めて東京に遊びに来たとき、JR新宿駅東南口Flags(フラッグス)前のエスカレーターで 「うわぁ!外なのにエスカレーターがあるぅ〜!」 と大声で叫び、すれ違う人たちに笑われた。


東京では普通に見かける屋外エスカレーターだが、考えて見れば雪の多い田舎では屋外にエスカレーターなど無い。冬は雪で稼動できないし、動いたとしても凍って危ないだろう。
子供の"気付き"ってすごいなぁ、と思った。


今朝の東京は雨。
3号機にはみんな、傘を差しながら乗っていた。