通勤ラッシュ電車劇場

元気に 「さぁ、やるぞー!」 という日も、落ち込んで凹んだ日も、イライラしてトゲトゲのサボテンみたいな日も、いろいろある。
今朝の私は、サボテン。サボテンは、いつものように朝の通勤ラッシュ電車に挑む。


何本かに1本、始発電車が出る駅なので、ホームに並んで電車を待った。2列並びの6番目。座るにはギリギリの順番だ。空っぽの電車のドアが開いた瞬間にスタートする、席取り争い。誰の目にもブルーのシートしか映っていない。
はーっ、何とか座れた。。。
駅を出るときにはもう、車両の中は混雑していた。


座っている私の前に立ったおじさんの鼻息が臭い。性質の悪いことにこのおじさん、どんなに混んでも自分の立ち位置をキープするタイプ。靴底が電車の床にピッタリ貼り付けてあるのでは?と思うほどだ。押されても押されても吊革とポールを離さず、逆に周りを押し戻す。臭いに弱い私の前キープとは、かなり厄介だ。


その後ろに立つ女性のストッキングは伝線している。


伝線の隣のおばさん。痩せていてスタイルが良いのに、ケミカルウォッシュのジーンズとダンガリーシャツの組み合わせが、ちょっと厳しい。


斜め前の中年男性は、ズボンは染みだらけ、シャツはしわくちゃ、シャツの裾は左半分だけ飛び出している。そんな格好でどこに行くんだろう。


隣に座るおじさんは、やたら足をグワーッと開いて座る。私の足に触れてもお構い無し。スカートを直すふりをして、わざと手がおじさんの足に当たるようにし、「少し足を閉じてよ」 と信号を出すが、意に介せず。携帯をバシバシいじりながらも、大開の足は微動だにせず。


おじさんの鼻息臭に20分も耐え、やっと地下鉄の乗り換え駅へ到着。
座れないが気にしない。ガツガツと空席を探すこともしない。2駅先の大きな乗り換え駅でたくさん降り、必ず座れることが分かっているからだ。


座れてから次の駅で、巨大なサラリーマンが乗ってきた。どう見てもお尻が入らないであろう私の隣のスペースに、無理やり座る。ムニムニの太ももが当たって気持ち悪いので、席を立った。


しかし今朝の私はサボテン。
席を立ち、今まで自分が座っていた空席の前に立つ。そう、巨大なサラリーマンの斜め前にそのまま。「あなたが無理やり座るから、足がピッタリ当たって気持ち悪いのです」 と、車両内の電光掲示板よろしく無言の全身アピール。
自分でも嫌なヤツだと思うが、自ら進んで嫌なヤツになりたい日だってある。「そうよ、あたし、本当に意地悪なの。何か文句ある?」 的な日が。
まぁ結果、その巨大なサラリーマンの方が先に降りたわけだが、その人も私に構わず座り続けたわけだから、どっちもどっちだ。周りを気にしないタイプなんだろう。


朝の通勤電車内では毎朝、こうした小さな戦いがそこかしこで起こっているわけで、でも大半の人がそれを口に出さず、無言なわけで。


心の中の呟きが音になる装置なんかが開発されたら、世の中の平和バランスが一気に崩れるんだろうなぁ。
今朝みたいなサボテンVer.の私なんか、ボコボコにされるかもしれない。


サボテンのトゲを抜こうと空を見上げているが、東京の空じゃぁ流星群どころか普通の星もほとんど見えない。。。