「すっとぎ」 と 「くるみ餅」

お正月、帰省していた田舎から東京に戻る時に、おばあちゃん(母)に色んな食材を荷造ってもらった。毎度毎度、東京に戻る朝はその準備でバタバタだ。
「卵は?」 「東京にも売ってるからいいよ」
「白菜とキャベツは?」 「それも売ってるけど少しだけなら持って行く」
「ウィンナーは?」 「買うからいいよ」
「お餅は?」 「少しだけ持っていく」
「きな粉は?」 「東京には茶色しかないから、緑色のきな粉なら持ってく」
とまぁ、こんな感じで会話が延々と続く。


そんなの中 「『すっとぎ』は?」 「それは、絶対に持って行く!」 という会話が交わされた。
昨日、岩手&お豆好きの鉄子ちゃんに少し分けてあげたところ、「すごく美味しい!」 とお褒めの言葉を頂いた。素朴な田舎菓子なので、なかなか初回で 「美味しい」 評価を頂くことは難しいお菓子。
さすが、お豆好きの鉄子ちゃん。分かっていらっしゃるー!

『すっとぎ』 は、岩手のおやつ。私が育った地域では青大豆を使った緑色だが、他では黒豆を使った黒いモノや、白い豆を使ったモノもあり、『豆すっとぎ』 や 『豆しとぎ』 などと呼ばれている。
私が小さい頃から食べていたのは、この青大豆を使って作った 『すっとぎ』 。山の神様の日のために作るので、この時期にたくさん出回る。スーパーでも普通に売られていたポピュラーなおやつだった。あまり日持ちがしないので、たくさん作って冷凍保存しておく。
青豆を茹でて潰し、米粉・砂糖・塩と混ぜて棒状にすると出来上がり。シンプルだが、豆の香りが非常に強く、素朴な優しい味がする。

今日の帰り道のこと。会社を出て駅に向かう道で、「そういえば、岩手はめちゃめちゃ寒さと雪に襲われてたなぁ」 と思い、おばあちゃんに電話をしてみた。
雪が降り続き、雪かきが大変だそうだ。日中も0度以下の真冬日が続き、かなり寒さも厳しいとのこと。なんやかんやと10分ほど話して電話を切り、電車に乗った。


私の家の最寄駅まであと数駅というところで、おばあちゃんから携帯電話に着信があった。いつも、電話で会話をした後にはもう一度、電話を掛けてくるのがうちのおばあちゃん。「またか」 と思いながら、電車の中だったので電話に出ずに切った。すると数分後、また着信。「まだ電車の中だから出られないの」 とメールしてみたが返信がない。「もしかして、おじいちゃん(父)がまた倒れたのか?」 と、急に心配になった。途中の駅で電車を降り、おばあちゃんに電話をしてみた。
「何かあった?」 と聞くと 「今日は小正月だから、帰ったらお餅を食べてね」 だって。「はぁ?それだけ?」 と心の中の叫びがそのまま言葉になって出てしまった。「何かあったかと思って、途中で電車を降りちゃったよ」 と言うとおばあちゃんは 「あら、ごめんなさいね。お餅はまだあるの?」 と続ける。「あるから大丈夫。じゃ、電車に乗るから切るね」 と言って電話を切った。はふーっ。。。



「もー!!」 と思いながらも、そこは素直な私。家に着くと、冷蔵庫から田舎のお餅を取り出し、カビのチェック。うーん、微妙に気になる部分があるので、そこだけ削り取る。昔からおばあちゃんに 「餅のカビは食べても大丈夫だから」 と言われてはいるけど。。。
お餅をレンジでチン!し、同じく田舎から持ってきた練りくるみと柔らかくなった餅とを絡めた。やっぱ、お餅はくるみ餅がいちばんだよなぁ。お餅用の練りくるみは東京で探してもなかなか売っていないので、必ず田舎から持ってくる。
とりあえず携帯カメラでも撮影し、おばあちゃんに 「ちゃんとお餅食べたからね」 とメールした。間もなくおばあちゃんから、良かったレスがあった。

こういう田舎のお菓子や習慣って、年々忘れていくなぁ。今夜の厳しい寒さが、余計に身に沁みた。