ふたつの 「おめでとう!」

今日は、おじいちゃん(私のお父さん)の誕生日。今日のうちに 「おめでとう!」 と電話で話せて良かったぁ。何歳になったんだっけ?

おじいちゃんの左半身が不自由になってから、15年ほど経つ。それでもデイサービスに行ったり、卓球をやったり、片手で車の運転をしておばあちゃん(お母さん)の足になってくれたり、すごく頑張ってるよね。
誕生日には、キャップとハンチングのふたつの帽子を贈った。外出するときはいつも帽子を被るので、春らしい明るめの色の帽子をプレゼント。おばあちゃんからは、帽子を被ったおじいちゃんの写メが送られてきた。よく似合ってるじゃん!

夜、電話が掛かってきて話したら、プレゼントをとても喜んでくれていた。良かった、良かった。
ただ、ハンチングは被り慣れないのでしっくり来ないらしく、「この鳥打帽は、いつ被ればいいかなぁ」 と心配していた。 「とりあえず、デイサービスからデビューしたら?」 と言ったら 「そうだなぁ、そこから被ってみるか」 とのこと。大丈夫、きっと似合うから。電話を代わったおばあちゃんは、「被り慣れないから、恥ずかしがってねぇ」 と笑っていた。

『もったいない』 が口癖の両親は、プレゼントをあげても 「もったいないから」 と仕舞ってしまうことが多い。おばあちゃんに 「仕舞わないで、すぐ使ってよー!」 と言っておいた。



そして昨日は、姪っ子Mが小学校を無事に卒業。家族全員が心から 「おめでとう!」 と叫びたいほど、嬉しい日だった。
お兄ちゃんの転勤で3年前に実家から離れたところに引っ越したので、おじいちゃんとおばあちゃんは卒業式に出席する姿を見ることはできなかったが、お兄ちゃんから届いた写メでその姿を見ることができて喜んでいた。私も同じ写メをもらった。あー、本当に大きくなったねぇ。嬉しくて涙が出て止まらないよ。

お義姉さんがMの妹を出産して2日後に亡くなった時、Mはまだ4歳だった。それからの大変だった毎日。今、思い出しても、凄まじい毎日。

おばあちゃんは生まれたてのチビを育て、毎日Mの幼稚園のお弁当を作り、幼稚園の送り迎えをし、全ての家事をこなした。
お兄ちゃんは1年間、仕事を休業して子育てをし、家事を手伝い、この状況で壊れ切った自分の心のケアをした。
私は毎週末、東京から新幹線で田舎に帰って、子育てと家事の手伝いをした。
体の不自由なおじいちゃんは、周りの人に迷惑を掛けないよう、出来る限り自分のことは自分でやった。
大人たちは心の余裕もなく、ただただ必死だった。今、こうして文字にするとこれだけのことだが、あの頃は本当に家族が疲れきっていた。
東京から実家に帰り、数年前に新しく建てた家の玄関前に立つ時、「この新しい家には悪魔に狙われているんじゃないか?」 と思った。いつもいつも、この家の上にだけ真っ黒い雲がかかっているように見えた。私の頭の中もおかしくなっていたのかもしれない。心の持って行き場がなく、この世に神様なんていないんだ!何でこんなに酷いことをするんだ!と思っていた。


でも、そんな私たちを救ったのは、チビたちの存在だった。もともと神経質なMは、お母さんが居なくなったことで心が不安定になることが多く、家族みんなが対応に苦労したが、それでもMとチビの可愛らしい寝顔を見ると、「頑張らなくちゃ!」 と思えた。
Mの卒園式、小学校の入学式、運動会のような学校行事、とにかく何かある度に帰省し、お兄ちゃんと一緒に参加した。下のチビの入園式にも出席したなぁ。あの頃は、チビたちが寂しい思いをしないよう、本当に必死だったなぁ。結婚も出産もしていない私だが、おかげで何となく子育てをしている気分を味わうことができた。今でも自分の子供のように思えてならない。
そう、これが、私がおばバカたる所以だ。

そんなMが小学校を卒業なんてねぇ。私も出席したかったなぁ、卒業式。今は新しいママが居るのでそんなことはできないが、きっとおばあちゃんもそう思っただろうなぁ。Mは、家族みんなが全ての愛を注いで育てた子だから。
Mがどれだけ覚えているのかは分からないが、いつかもっと大人になって自分も子育てをするようになったら、周りから受けた愛を再確認してもらえるかな。そんな日が来るといいなぁ。



今朝、通勤途中にある廃校の大きな桜の木を眺めたら、蕾が膨らみ、先の方からピンク色の花びらが少しだけ顔を出していた。暖かい日が続いているから、もうすぐ咲くね。
うちのMも、中学校でもっともっと花開いて欲しい。私はとても楽しい中学時代を過ごしたし、思い出もたくさんあるので、夕べMからもらった電話の時にも、「中学校は本当に楽しいよー!いっぱい楽しむんだぞー!」 と言った。Mは 「うんっ!」 と元気に返事をしていた。
小学校とも高校とも違う、中学にしかない独特の空気を、思いっきり感じて欲しい。

私たち家族の宝物Mへ。

〜 あなたに降り注ぐ全てが 正しい やさしいであれ 〜 Coccoジュゴンの見える丘』より