立川談春25周年 スペシャル独演会 −THE FINAL- 「たちきり」

去年の5月から続いた25周年記念の独演会も本日が千秋楽。夜のチケットは取れないだろうと思って諦めていたから、追加公演が決まって嬉しい!この箱は2062席もあるそうだが、何と今日は4列目!追加公演とはいえ、チケットが取れただけでもラッキーだと思っていたが、良席でこれまたラッキー。じっくり聴かせていただこう。


今日は千秋楽ということで、ロビーで色んな企画が催されていた。まず、入り口で全員が三角くじを引くことになっていた。空くじナシとのこと。私のくじには 「よくできました」 の文字。景品引換所で、今日の日付の入った談春さんのポストカードを頂いた。

3Fロビーでは厚生年金会館に登場した名人たちの写真展、2Fロビーでは談春さんの写真展をやっていた。他にも、写真入りチロルチョコ・赤めだか写真入りガムの出てくる100円ガチャガチャ、景品がもらえる500円のチャレンジゴルフ、同じく景品がもらえるジャンボガラポンなども。私はジャンボガラポンをやって、談春オリジナル赤めだかの遊び箋とポチ袋を頂いた。
『これらの代物を見せられたときには、めまいと軽い殺意をおぼえましたが、御客様がたもそこは大人、縁日のテキヤに欺されたと思って笑ってやって下さい』 とプログラムにあった。
他にも手ぬぐいやストラップ、写真集などの販売コーナーもあり、今日のロビーはとても賑やかだった。

【本日の演目】 粗忽の使者  愛宕山  たちきり



今日は、高座の後ろに金屏風、そしてその上に巨大スクリーンが設置されていた。どん帳が上がると、スクリーンには 『立川談春 25周年スペシャル独演会 THE FINAL』 の文字。会場に談春さんのナレーションが響く。 『スクリーンなんて暴挙、愚挙に出て、と思うだろうが、これを最初にやったのは師匠の立川談志です』 。会場がどっと沸く。そのまま、談志師匠がこの会場でスクリーンを使ったときの模様が映し出される。お客さんにスクリーンの要・不要を尋ねるやりとりは面白かったなぁ。客席から観たいという師匠は、袖に居たのに突然呼ばれ、スーツ姿のままの談春さんを高座に上げ、自分は客席へ。もう、自由人。

この間志らくさん独演会の日記にも書いたが、私は評論家でもないし、落語通でもない。ただの 『落語好き』 だ。だから、ひとつひとつの演目について、ああだこうだ語ることはできない。ただ、今日も談春落語が聴けて良かったぁ、ということしか言えない。
粗忽の使者、地武太治部右衛門の粗忽っぷりと落ち着いた田中三太夫のやりとりは、見事だったなぁ。この噺に限らず、私は談春さんの笑うところが好きだ。職人たちの威勢の良い笑い方、お店の旦那様の品の良い笑い方、太鼓持ちの愛想笑い、どんな笑いもその人柄が分かる笑い方をする。思わず、見ているこちらもニヤリとしてしまう。


粗忽の使者の後、愛宕山に入る前、またスクリーンに談春さんが映り、昔のことを語った。談志師匠のところに弟子入りしたのは17歳の何と3月27日!今日だ。
初めて談志師匠が稽古を付けてくれるという緊張の日、目の前の談志師匠が 「弟子入りしたということは、落語話せんだろ。何かやってみろ」 と言ったそうだ。高校の落研ではトリを務めることが多かったため、大きい噺ばかりやっていた談春さん。さすがに師匠の前で芝浜をやるわけにもいかず、大山詣りをやったそうだ。 「誰の 『大山詣り』 だ?」 と聞く師匠に、志ん朝師匠の落語が大好きで殆どの落語を志ん朝師匠で覚えた談春さんは 「はい、志ん朝師匠のです!」 と答えたそうだ。そんな談春さんに談志師匠は 「志ん朝か。志ん生なら違うな」 と言ったそうだ。本人も言っていたが、もの凄く恐ろしいエピソードだ。


そんな志ん朝師匠と同じ会に出る機会が亡くなるまでに三度あったそうだ。初めては、志ん朝小三治の二人会。その緊張はすごかったそうで、前日は眠れず、当日も緊張しっ放しだったそうだ。楽屋に志ん朝師匠が入ってきたときに挨拶したが、そのときは目を合わせてもらえなかったそうだ。だが次に同じ会に出してもらった時、他の方が 「談春さんです」 と紹介したところ、「知ってるよ、馴染だから」 と志ん朝師匠は言ったそうだ。3回目ではなく2回目なのに馴染と言ってくれたことが、談春さんは本当に嬉しかったそうだ。志ん朝師匠はそういう風に、自然に人を喜ばせることが上手な方だったそうだ。


厚生年金会館は今月末で閉館する。談春さんは、「歌舞伎座、大阪・フェスティバルホール、厚生年金会館と潰してきた私ですが」 と言っていた。でもスクリーンに映った談春さんは、今日、厚生年金会館でやりたかった理由はふたつあると言っていた。ひとつは、初めて志ん朝師匠と同じ会に出させてもらった場所だから、ということ、もうひとつは、談志師匠の会でスーツ姿で高座に上がり 「師匠はこんな広い会場でやっているんだ」 と思った場所だから、ということだそうだ。


そして愛宕山へ。
愛宕山で私が好きなのは、土器(かわらけ)投げの場面。噺家さんによって、投げた後の目線が様々だからだ。ほんとうに飛んでいる土器の動きが分かるようなその体と目の動きは、見ているこちらも引き込まれてしまう。
でも正直このシーンは、談笑さんの方が滞空時間が長く、距離も遠くまで飛ばしている(ように見える)ので好きかな。


お仲入り後は、いよいよたちきりだ。
前の二席同様、枕は無し。サゲのために、芸者のお代は線香の本数で決まるという話をしていた中で 「 『芸人殺すにゃ刃物は要らぬ 欠伸三つで即死する』 と言いますが時計を見られるもの嫌ですねぇ」 と言っていた。確かに、つまらないとつい、時計を見てしまうよなぁ。もちろん、談春さんの会で、そんなことをしたことはしたことないけど。
たちきりに入ってから終わるまで、会場は頭ひとつ動かない、咳ひとつ出ない、大げさではなくそんな感じだった。大きな波のない噺、舟を漕ぐ頭のひとつやふたつありそうだが、小糸のお母さんの語りに取り憑かれたかのようになっていた・・・気がする。
少し泣けた。あ、今日は、スクリーンで語られた志ん朝師匠とのエピソードの方が泣けたかな。


今日のパンフレットに、こんな件があった。

目一杯、肩肘張って
笑っちゃうほど力みまくって
演らしてもらいます
何年後になるのかはわかりませんが
力みまくっていた自分を愛しく思える日が
きっとくるのでしょう
その日まで走り続けることを誓って


今日のオマケ。
厚生年金会館に飾られていた、直筆サイン入りパネル。


同じく飾られていた、第19回厚生年金寄席 古典落語の会の写真。
昭和47年8月23日。


立川談春 Official Homepage   なかなかチケット入手が難しい談春さん。スケジュールのチェックはお早めに。