やさしい灯り

いつも通勤で通る道。車1台がやっと通れるぐらいの細い道。道の両側には、殆どが誰も住んでいない戸建。どんどんマンションが建てられ、立ち退きを余儀なくされたのだろう。庭は荒れ放題で、粗大ゴミが捨てられたり野良猫の遊び場になったりしている。この通りに住んでいるのは、通りの入り口にある酒屋さんと、通りの出口にあるお米屋さんだけだ。商売柄、昔からここに住んでいるのだろう。


通りの中ほどにあるマンション前には街灯がふたつある。廃屋ばかりで夜は殆ど人通りがないので、街灯はマンションの前にさえあれば充分なのだろう。人感センサーもあるので、私が通る時もパッと灯りが点く。それ以外は、2〜3件の人が住んでいるお宅の玄関の灯りしかなく、かなり暗い。お米屋さんの前は大きい通りと交差しているのだが、酒屋さんの脇は暗め。


その酒屋さんの脇に、ガムテープで幾重にも補強された古い傘をかぶった電球がひとつある。

暗くなると自動的に点灯する街灯とは明らかに違う電球。朝の通勤の時、何だろうと思って見ていた。帰りに見ると、弱いながらも灯りが点っている。これも街灯なんだなぁ、とは思ったが、なぜこんなにボロい?
仕事が早く終わったある日の夜、この電球の前を通ったところ、酒屋のおじちゃんが電球からずーっと下に伸びた線の先にある小さな黒い箱を開けるのを見た。何だろう、と思って見ていると、中に入っているスイッチをパチッと入れた。すると電球がパッと点いた。えーっ!手動なのぉ?
いつも酒屋でタバコを買っているので顔見知りのおじちゃん。私を見付け、 「おかえりー!」 と声を掛けてくれた。間髪入れず、 「これって、手動なんですか?」 と聞いた。おじちゃんは 「あはは、そう。俺がスイッチ入れないと点かないんだよ。これがないと暗いだろ?町内会で相談して付けたんだ」 と言った。住んでいる人なんか僅かしか居ないのに、私たちのように通勤や通学で通る人たちが多いため、危ないからと付けたそうだ。何も知らず、毎日通っていたのが申し訳なく、ついおじちゃんに 「毎日、ありがとうございます!」 と言ったところ、おじちゃんはアハハハ!と笑ってお店に戻って行った。

ここを通る人たちの中で、この灯りがあることに気付いている人はどれだけいるのだろう。こんな風に、自分が気付かないところで色んな人に助けられているコトって、いっぱいあるんだろうなぁ。パーッと明るい街灯よりも、ぼやーんと柔らかいこの電球の灯りの方が、温かくて優しいおじちゃんらしいね。



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