黒光りする憎いヤツ

何かのご縁で、このページを開いてしまった方。虫 (夏に出るあの黒いヤツ) が嫌いなら、ここから先は読まずにページを閉じた方が宜しいかと・・・。



数年ぶりに部屋に出た!・・・たぶん。あいつが、夏に出てくる黒光りする憎いヤツが、キッチンに!


うちはキッチンの脇にお風呂とトイレがある。図面上はDKとなっているが、単なる広めのキッチンというところ。朝、ボケーっとしたままシャワーを浴び、風呂の折り戸を開けたところ、床を黒いものが走った・・・ように見えた。置き場が無くて積み重ねてあった、冬物を入れた袋たちの下辺りへ。本当にあいつが走ったのか、光と影の具合でそう見えたのか定かではないが、とにかくあいつが大大大の苦手の私に恐怖を与えるには、その黒い影だけで充分だ。
ふーっと大きく深呼吸し、ガタガタ震える足を手で押さえた。全身が心臓になったみたいにバクバクする。さっきまで大好きだった自分の狭いお城が、あいつのせいで悪魔の館に思える。あー、どうしよう。。。とりあえず、暗いと出てきてしまう気がして、キッチンの電気を点けた。動きはない。


ここの部屋に住んでからもう10年弱。いままで何度も引越しをしてきたが、黒光りする憎いヤツが出たのはこの部屋だけだ。入居前、水周りの配水管と床の設置面などアイツが通れそうなところは全て塞いだので、出るなんて思ってもみなかった。キッチンには年中、アイツ対策グッズを置いてある。たぶん、窓を開けている時に外から入ってきたんだなー。
初回はテレビの後ろの白い壁にいきなり居た。さっきまで何もなかったのに、いきなりアイツが白い壁にっ!もう、このまま倒れるんじゃないか!?と思うほど、心臓がドキドキして足も手も震えた。ひとりだったので、自分で何とかするしかない。
まず部屋とキッチンの間の戸を閉め、冷房を19度にしてキンキンに部屋を冷やす。救助を呼ぶまでの間、アイツの動きを封じないといけないから。キッチン側から戸を少し引き、隙間からアイツが動かないのを確認しながらどうするか考えた。とりあえず、撃退スプレーはあるのだが、怖くて近付けない。アイツは飛ぶ!と聞いていたからだ。


このままでは自分も凍えてしまう。意を決してスプレーを手にし、キンキンの部屋へ。アイツは全く動かない。声にならない声をあげながら、一気にシューッとスプレーした。逃げるアイツの後を追ってスプレー1本丸々シューッと使い切る。スプレーでアイツの姿が見えないぐらいに。人間の私の方がやられそうなぐらい、部屋にはスプレーが充満した。
アイツの遺体がありそうな場所は分かっている。さぁ、ここからどうしよう。時間は深夜。いまの時間から誰かを呼ぶことはできないので、タウンページを開いてなんでも屋さんを呼んだ。もし、アイツの遺体が確認・処理できなくても1万円かかるという。お金なんかどうでもいいから早く来てください!的なことを言ったような気がする。
間もなく到着したなんでも屋のおじちゃん、私が指示した場所付近でアイツの遺体を発見! 「スーパーの袋ありますか?」 と聞いてきたので1枚渡すと、袋に手を入れ、遺体を掴んで口を閉めた。はーっ、これで寝られる。。。おじちゃんの作業時間5分、もちろん1万円お支払い。
次の日、会社でこの話をしたら 「1万円もらえるなら俺が行ったのにー」 といろんな人に笑われた。くっそー!お前たちが来ても1万円なんか払わんぞー!


その次も深夜に出没したのだが、なんでも屋の電話が繋がらず。これまた半べそかいてスプレーを1本使い切り、心臓ドキドキしながら遺体を掃除機で吸い、そのまま掃除機を捨てた。その次も、掃除機を捨てた。アイツのおかげで、掃除機2台を無駄にしてしまった。。。
その次は相方が居たので処理してもらい、その次は夜早い時間だったので近くに住む同僚男子を電話で呼び出し、処理してもらった。1万円は払わなかったけど、お礼に缶ビールを何本か渡した。


それから夏はできるだけ窓を開けないようにした。アイツは水を求めてやってくると聞いたので、台所のシンクは水を完全に拭き取って、水滴が残らないようにしている。何年か出ていなかったのに、なぜ今朝・・・。
本当なら完全にアイツの死を確信するまで部屋を離れたくないのだが、今日は出勤日。初の朝出没に戸惑う。仕事に行かないわけにはいかないので、ドキドキしながら早めに出掛ける準備をし、玄関を出る前に 「これでもかー!」 というぐらい、アイツが居そうな場所にスプレーして出掛けた。もちろん、照明&エアコンは点けっぱなしで。もっと若い時だったら、会社を休んで戦っていたかもなぁ。だって処理しないで出掛けたら、怖くて部屋に帰って来られなかったもん。いまは気になりながらも、平気でこうしてのん気に日記なんか書いてるけどね。ドキドキはしたけど、それでもたくましくなったなぁ、私。


帰ってきてからいままで、アイツの姿はない。もしかしたらアイツではなく、光と影の具合でアイツが走ったように見えただけかもしれない。きっとそうだ、あれはアイツじゃない。うん、そうだ。アイツなんか居なかったんだ!
あっはっはっは・・・あっは・・あは・・・やっぱり笑えないわぁ。あー、エアコン寒っ!
こうして部屋の中に、見えない恐怖に包まれたミステリーゾーンが出来てしまったのであった。はふーっ。



・・・今日の重量【前日比0kg、基準日比−2.0kg】 ← アイツが怖くてちゃっちゃと計測したから、正確じゃないかも。