落語入門 昼の部:立川志らく編 夜の部:立川談笑編 通し


今日は、ぴあ主催の落語会 「落語入門」 を観に、赤坂の草月ホールへ行った。昼の部は13時から立川志らくさん、夜の部は18時から立川談笑さん。なんて贅沢な通し券なんだー!私には、セブンイレブン発券の紙チケットがプラチナのように輝いて見える。志らくさんはTwitterで今日の演目を公開していたから、楽しみが更に増してワーイ!ワーイ!状態。
先に、いつものゴメンナサイ事項を。私は評論家でもないし落語通でもなく、ただの20年ほどの落語好き。ここに書いているのは自分用記録なので、通の皆様の参考にはなりません。日記に書くと、検索で覗いてくださる方々がとても多くて、いつも本当に申し訳ないので。

赤坂の草月ホールは自分の会社から徒歩で5分ほど。いつもの慣れた道が、ウキウキに向かっていると景色が違って見えるから不思議だ。普段は黄色くなるまで気にしない豊川稲荷の大銀杏を見ながら 「まだまだ青いねぇ」 なんて思ってみたり。
昼の部は志らくさんの会。最初に高座に上がったのは、らく次さん。演目は 「湯屋番」 。明らかにアウェーな感じで、やり辛かっただろうなぁ。会場が温まるまでに、けっこう時間がかかっていたし。

そして、志らくさん登場。私にとっては、6月の下町ダニーローズ公演以来の志らくさんかな。あれ?何でこんなに間が空いてしまったんだっけ?仕事で予定が合わなかったのかなぁ。4日のTwitterに今日の落語会について志らくさんがつぶやいたのは、 「わかり易い落語をやるのでは無く初心者をおどろかす予定。誰も想像がつかない対談。今年東京最後のせんきの虫。壮絶さが増した柳田格ノ進。初心者ではなく上級者用の会だね。」 だった。
その対談相手とは・・・何と、十代目 金原亭馬生師匠!高座にはイーゼルに馬生師匠の似顔絵パネルが立掛けられ、その隣に志らくさんが座った。ちなみにこの絵は、らく次さんが描いたそうだ。
対談と言っても、志らくさんが一方的に馬生師匠のパネルに話しかける対談。馬生師匠は、志らくさんが噺家を目指すきっかけになった方。衝撃のTV画面を通しての一方的な出会いから、弟子入りしたかった話、亡くなる10日前の馬生師匠の高座の話、関係者でもないのにお葬式に押しかけてお線香をあげさせてもらい号泣した話、家元に弟子入りしたきっかけ等など、いろんな思い出を馬生師匠に向かって語りかけていた。
語りかけている志らくさんを見て、何度も涙が滲んでしまった。

「本当に馬生師匠の弟子になりたかった。でも、談志の弟子になっていなかったら今の志らくはなかったので、談志の弟子になって良かった。でも馬生師匠は、心の中では今でも師匠だと思っています」 と言っていた。 「落語を知っている人にはよく、志ん朝に似ている、と言われる。でも、もっとよく落語を知っている人には、馬生に似ていると言われる。それがとても嬉しい」 とも言っていた。
笑ったり、涙が出たり、とにかく聴き入ってしまった。凄く面白い 「対談」 だったなぁ。落語入門というより、 「志らく入門」 といった感じだった。


そして 「疝気の虫」 へ。今年は3月の独演会6月の演劇落語、そして今日と3回、この話を聴いたことになる。今日は、3回の中でいちばん、ラーメンの種類が多かった!ラーメン話の中で家元も登場したし。虫もメチャメチャ元気で、今日も笑ったなぁ。もはや、他の人の疝気の虫では物足りなくなってしまったかもしれない。



お仲入り後は 「柳田格之進」 。馬生師匠との対談の時に志らくさんが、こう言っていた。 「他の人がこの話をやるとき、美談にしようとして終わらせるのが嫌だった。馬生師匠のように陰惨なまま終わらせるのが良い。今日は友達というところに視点を置いてやろうと思っている」 。そして、その通りの柳田格之進だった。首をはねようとする前、娘を吉原に売り、お金を工面して連れ戻してからの娘を語る、格之進怒りの場面から最後までは迫力が凄くて良かったなぁ。息をするのも忘れる、というのはこういうことなんだろうな。
今年、たぶん私にとっては最後の志らくさんの落語になるだろう。満足の終わりだった。

志らくさんの昼の回が終わってから談笑さんの夜の回の開場まで2時間半。地元赤坂で過ごすか、青山方面へ行くか悩み、 「青山に行ったら、絶対に開演までに帰って来られない!」 と誘惑の多い青山を避け、いつもの赤坂方面へ。この話はまた別の機会に。


談笑さんの会では、入り口で1枚のチラシが配られた。 「今日の公演の中で、Twitterを使ったQ&Aコーナーを実施します。Twitterで談笑師匠に質問をつぶやいてみてください。可能な限り、舞台の上から質問にお答えします」 とのこと。落語会では 「携帯電話の電源をお切りください」 とアナウンスされるのに 「Twitterで質問してください」 とは、思い切ったことをやりますなぁ。どうなることやら。


野球拳の出囃子で談笑さん登場。
一応、今日は 「落語入門」 ということなので、と軽い自己紹介から始まった。生まれ育った町のこと、学生時代のこと、家元に弟子入りしたときのことなど。私の周りの席は、いつも独演会で見掛ける顔ばかりだし、通し券の客も多かったけどね。談笑さんが自分の落語を紹介するときに、古典をそのままやらないことが多い、という話になった。よく言えば 「恐れていない」 、悪く言えば 「古典を尊重していない」 と言うと、会場がドッと湧いた。 「時代も人々の生活様式も変わり、古典のままではピンと来ない言葉も多い。それをアレンジすることで、その話がお客さんに直結するなら、それでいいと思っている」 と。古典を現代風にアレンジした談笑さんの作品はいくつかあるが、それらはプロでもアマでも誰でもやってもらって構わない、とも言っていた。


最初は 「金明竹」 。面白かったなぁ。与太郎もおばさんも津軽弁のお客さんも、みんな可笑しかったぁ。津軽弁にしているのは談笑さんならでは。お父さんの実家が青森ということで津軽弁にしたそうだが、東北人の私が聞いても分からないところだらけだった。実はこの津軽弁、それでも30%ぐらいにゆるくしているそうで、100%津軽弁だと本当に何を言っているのか全く分からないそうだ。おばさんが津軽弁のメモをとるのだが、 「ひらがながナイ!」 には笑ったなぁ。文字に出来ない発音が多いもんね。これが、北の地域に行けば行くほどウケが良いらしい。二つ目のとき、岩手県の北上で家元の落語会があり、家元の前にこの津軽弁金明竹をやったところ、もの凄くウケたそうだ。そして、帰りの新幹線に乗るために駅のエスカレーターに乗っている時に、家元に突然、 「お前、真打になるか?」 と言われたそうだ。 「えーっ!?」 というタイミングで言われたため、この北上でエピソードは今でも忘れられない、と言っていた。


お次は 「薄型テレビ算」 。 「時そば」 が談笑さんの手に掛かって現代風にアレンジされると、さらに巧妙な手口の話になる。何度見ても、からくりが分かっていても、面白いものは面白い。もう、話の入り口を聴いただけでニヤニヤしちゃうもんね。
この話が終わってお仲入りとなったのだが、ザワザワした会場の中で 「ねぇ、結局どういうことなの?」 とご主人に聞いている奥さんがいて、それも可笑しかった。


お仲入り後は 「ツイッターQ&A」 。携帯電話を手に持って口座に上がる噺家なんて、見たことないよ。 「最初は、事前告知しようと思ったが、会場で回答するんだから当日告知にしようということになった。 『だったら、アンケート用紙でいいじゃないか』 ということなんですけどね」 と言うと会場は大爆笑!でもせっかくなのでいくつか回答します、とのこと。
Q:ネタはいくつぐらいあるのか。
A:100ぐらいかな。でもいつもやるネタは30〜40ぐらいだと思う。詳しくは花禄師匠の著書 「落語家はなぜ噺をわすれないのか」 を読めば分かる。
Q:なぜ着物を着替えないのか。
A:前座の時に、着替えをやめようと思ったから。そのクセが今も残っている。見栄えよりも落語の内容で勝負したい。
Q:かなり痩せたが、ダイエット法は?
A:我慢が全て。レコーディングダイエット。何度も開いて読むこと!
Q:●ャブ浜はもう、やらないのか(今日の始めの方で、家元に禁止された時の話があった)
A:実は、家元から解禁の言葉をもらった。でも、それもワナかもしれないので様子を見ている。
Q:大学で法律を学んだと思うが、落語に生かされているか。
A:生かされている。自分の話には男尊女卑はない。古典は男尊女卑が多いが、そこは気を付けている。
Q:本当に、上納金制度はあるのか。
A:疑っていること自体が、有難い。
Q:おススメの落語家はいるか。
A:志の輔師匠。


この後に最後の演目 「芝浜」 。もちろん、談笑風の 「芝浜」 。
私は談笑さんの目線というか目の動きが、とても好きだ。談笑さんの目の動きは、高座を広い屋敷や二階建て家屋の上下や山の中のようなとても広い空間に変えたり、ピンポイントの一点だけに集中させたり、とにかく他の噺家さんより、そのイメージを膨らませる技量が凄い。 「愛宕山」 のかわらけ投げなら、飛んでいる方向や距離までが、画になって頭に浮かぶ。今日の芝浜は、その目の動きから自分の目が離せなかった。砂浜で財布を見つけてから取り出すまでの仕草がたまらなく良かったのに、草月ホールは殆どフラットなので前の人の頭で首から下が殆ど見えず、残念だった。
しっとりから笑い、笑いからしっとりし、そしてまた笑う。こんなラストの芝浜をやるのは、やっぱり談笑さんだな。亭主は、財布を拾ったことが夢じゃないって知ってたのかぁ。女房は、財布を隠していたことがそんなに辛かったのかぁ。女房のやりくり上手はそういうことだったのかぁ。とにかく夫婦の愛が全てということか。より納得のいく人情話になっていて、面白かった。


芝浜が終わった後、ひとりの眼鏡男子が高座の談笑さんに呼ばれて出てきた。 「今日から弟子にします。 『弟子入りなう』 です。今日は 『落語入門』 ということで、今日から入門となります」 と眼鏡男子を紹介した。
えー!?そんな大事なことを、イベントが 「落語入門」 だからということで今日にしちゃっていいの?確か、先月の独演会スペシャル2DAYSのどちらかで 「弟子になりたいと言っていて、自分の身の回りの世話をやっている子がいる」 と言っていたけど、その彼だね。たしか、京大だかどこかイイ大学出の高学歴クンだったよね。正式に弟子になった瞬間に立ち会えたなんて、こちらも幸せだぁ。どんな噺家になるのか、楽しみだなぁ。
何十年か先、 「私、●●が弟子入りした日の落語会に行ってたんだよ」 って自慢できるぐらいの有名な噺家になって欲しいな。



・・・今日の重量【前回比+0.2kg、基準日比−2.6kg】 ← お腹が鳴らないよう、しっかり食べた。