お兄ちゃんの 「お願い」 とは?

大きな余震が続いている。今日の夕方も、大きな余震があった。東京は震度4だったが、それでもけっこう揺れて怖かった。
でも、事務所の中で避難のための荷物を手に席を立とうしているのは、私ひとりだけだった。みんな、冷静に仕事をしている。怖くないの?逃げないの?と言っても、 「あはは、大丈夫だよ、これぐらいなら」 と言われてしまった。心臓がバクバク言っている私は、やっぱりおかしいのかなぁ。。。



そんな今日の夜、残業時間にお兄ちゃんから携帯電話に電話が掛かってきた。滅多に掛かってこないお兄ちゃんからの電話に、心臓がドキドキする。
大震災以来、同じ大船渡市内に住むお義姉さんの実家で生活してきたお兄ちゃん家族。地震でぐちゃぐちゃになっていた自分たちの家の中を片付け、やっと9日の土曜日から家族で生活しよう、と決めた直前に、あの震度6の余震があった。
何かあったの?



電話に出ると、いつもと変わらない声のお兄ちゃんだった。姪っ子たちの学校が20日ぐらいから始まることが決まったそうだ。そして自分が勤めている養護学校も、始業式の日が決まったとのこと。大きな余震はあったが、無事に自分たちの家に戻り、生活を始めたことも教えてくれた。チビたちは、午前中は避難所で炊き出しを手伝い、午後は寺子屋状態になっている塾に行っているそうだ。この間の余震は、夜中ということで不意を衝かれた上にとても長く揺れて怖かった、と言っていた。
大船渡では地震が起きる直前に、ドドドドドッという地鳴りがするという。その地鳴りの直後に、ガタガタガタッと揺れが来る、と。この地鳴りが恐ろしいそうだ。
あれれ?この間、メールで言っていた状況報告だよね?何だ、家族に何かあったわけじゃなかったのか。ホッとひと安心。
しばらく、近況報告をした後で、 「それでさ、お願いがあるんだけど・・・」 とお兄ちゃんが言った。



いつも 「今は物が足りてるから、大丈夫だよ」 と言うお兄ちゃん。やっと、必要なものを言ってくれるのか。 「いいよ、何?」 と聞いた。トイレットペーパーかな、乾電池かな、ガソリンは無理だけど、何だろう。チビたちの生活用品かな?
「あのさぁ、22日はMちゃん(お義姉さん)の誕生日なんだよ。プレゼントをあげたいんだけど、大船渡や釜石の店は殆ど閉まっているし、盛岡まで行く余裕も無いから、そっちで買って送ってくれないかな?Mちゃん、AIGLEが好きだからさ、半袖のシャツをあげたいんだよね。自宅に送るとバレちゃうから、学校(勤務先)に送ってくれる?」 だって。
なーんだ、お義姉さんの誕生日プレゼントかぁ。気合が入っていた私はガッカリし、同時にウフフと笑った。こんな毎日だけど、ちゃんとお義姉さんの誕生日を覚えていて、プレゼントをあげたいなんて、やるじゃん!お兄ちゃん。




「いいよー!サイズは?好きな色は?」 など情報を得て、お店から写メすることにして電話を切った。肩透かし気分はあったけど、少しホッとした。少しずつ、普通の生活に戻るために進んでいるんだね。
学校が始まらないまま春を迎えたチビたち、その学校を始めるために毎日、それぞれの学校で準備を頑張っているお兄ちゃんとお義姉さん。 
うちのお向かいの中学校の桜は、いま満開だよ。チビたちの学校が始まる頃には、大船渡の桜も、蕾が膨らむのかなぁ。
春は、少しずつ少しずつ、北上している。