中島潔作品集 『金子みすゞ憧憬』

震災以来、テレビCMで話題に上がっているACジャパンの公共広告。その中のひとつ、金子みすゞ (金子みすず) の詩 『こだまでしょうか』 。

「遊ぼう」 っていうと 「遊ぼう」 っていう。
「馬鹿」 っていうと 「馬鹿」 っていう。
「もう遊ばない」 っていうと 「遊ばない」 っていう。
そうして、あとでさみしくなって、
「ごめんね」 っていうと 「ごめんね」 っていう。
こだまでしょうか、いいえ、誰でも。



詩を読んだり書いたりするのが好きだった私。金子みすゞ作品も、よく読んだ。
数年前からずっと、会社の備品倉庫の奥の棚に、この本が置いてあった。そしてずっと気になっていた。 『中島潔作品集 金子みすゞ憧憬』 。
大き目のハードカバーの作品集を倉庫の片隅に置いたのは、誰だか分からない。誰も気にも留めていない。この本が、ずっとずっと気になっていた。開いてみると、2005年の初版本だ。思い切って、総務の同僚に聞いてみた。 「これ、誰の?会社のもの?モデルルームにでも置いていたの?」 「うーん、いつの間にか置いてあったんだよね。要らないから置いたんじゃないかな」 「これ、要らない?だったら、もらっても良い?」 「うーん、誰の物でもなさそうだし、会社の備品でもないから、イイよ」 。交渉成立!そしてこの本は、私の家にやってきた。
中島潔さんの絵も好きだし、金子みすゞの詩も好きだ。何度も開き、何度も読んだ。やわらかい画とやわらかい詩。とても素敵な本だ。


この中で、私がいちばん好きな詩 『不思議』 。

私は不思議でたまらない、黒い雲からふる雨が、銀にひかつてゐることが。
私は不思議でたまらない、青い桑の葉たべてゐる、蚕が白くなることが。
私は不思議でたまらない、たれもいぢらぬ夕顔が、ひとりでぱらりと開くのが。
私は不思議でたまらない、誰にきいても笑ってて、あたりまへだ、ということが。


この詩に対しての、中島潔さんの言葉。

黒い雲からふる銀の雨、ひとりでぱらりと開く夕顔、私たちのまわりには 「不思議」 があふれています。でも多くの大人たちは、あたりまえの一言でかたづけてしまうのです。
「不思議」 を感じるがままにごく自然にうたうみすゞのように、豊かな感性、大人たちが失いがちな子どもの心をいつまでももち続けたいと願っています。


きっと私の言葉では、この作品集の良さを伝えることができない。スキャンしては、中島潔さんの画と文の感動が伝わらない。だから、小さめに写したイメージだけ。私は今日も、この作品集で癒される。