ビビる私

今週末、岩手に帰る。そんなことは新幹線の切符を手に入れたときから分っている。いよいよ、その時が近付いてきた、と意識してからずっと、お腹を壊している。あれほど帰りたかった生まれ育った町なのに、今は行きたいような、行くのが怖いような、そんなビビリぃな私。


そうは言っても、時間は待ってくれない。
あと数日、というときになって仕事ではいろんな宿題が飛び込み、お付き合いで参加しないといけない食事会も飛び込む。誰かの嫌がらせじゃないのか!?と思うほど急に、忙しくなった。何なんだろう。。。
そんな中での今日は貴重な休みなので、4日間のスケジュールを立て、お土産を買ったり、それを発送したり、レンタカーを手配したり、宿を手配したり、そんなこんなを一気にやった。


今回はお母さんも一緒に宮古に行くと言っている。車は内陸にある実家のものを使ってもいいのだが、お父さんは足が悪いから遠慮すると言っているので、車は置いていってあげたい。私たちはレンタカーを使うことに決めた。

いつもなら宮古に行く時は本家にお泊まりだが、今は近所の津波で家が壊れたご家族が一緒に住んでいるので、行くことも伝えていない。迷惑を掛けないために、宿を手配することにした。これが大変だった!
観光協会のページに 「宿泊施設は、一部使えるところだけを使って営業しているので、限られています」 「災害復旧の方たちが利用しているので、限りがあります」 と。電話をしてみると、やはりどの宿も 「いま、いっぱいです」 と断られた。ホテルもビジネスホテルも民宿も。本家の近くの民宿では 「津波以降、再開できていないんですよ」 と言われた。これが現実なのだ。
いくつも電話をしてやっと1軒、空きが見つかった。素泊まりのビジネスホテルだけど、それで充分。電話で場所を確認しながら 「あー、郵便局の並びですよね」 と言うと 「あー、昔の本局の2軒隣です」 と言われた。昔かぁ。今は移転して無いらしい。私が住んでいた頃はもう、昔なんだ。これも現実。


とりあえず、2日間の準備はこれで完了。ホッとした。そして、さらにビビリが増してきた。何となく、心の隅っこがドキドキしている。私は生まれ育った海沿いの町に行って、何をするつもりなんだろう。何を思うのだろう。


昨夜、指揮者の佐渡裕さんのドキュメンタリー番組を観た。ベルリンフィルの素晴らしい演奏、佐渡さんの情熱のタクト。切り取った映像にもかかわらず、あまりの感動に思わずテレビ画面の前で、ひとりスタンディングオベーションをした。
南相馬との関わりが深い佐渡さんが海外でのインタビューの中で、南相馬を心配しながらおっしゃっていた。 「遠く離れているからこその、強い想いがある」 と。
その地にいる人には現場にいるからこその、遠く離れている人には離れているからこその想いがある。どちらがどうということはない。それぞれが、それぞれの想いを持ちながら、毎日を過ごしている。過ごしているというより、こなしていると言う方が合っている気がする。


ゾウの体にノミの心臓だな、おいら。