お月さまを探す日

三日前は、下のチビの誕生日。ということは、その三日後である今日は、亡くなったお義姉さんの命日。チビの出産から三日後、お義姉さんは亡くなったから。
あれから10年が経つんだね。10年も経った今だから、チビの誕生日とお義姉さんの命日を別々の日として考えられるが、お義姉さんが亡くなったあとの数年間は、チビの誕生日はお義姉さんを思い出す日であり、そこからの三日間は私たち家族にとって、とてもとても辛い三日間だった。特に、お兄ちゃんにとっては。毎年、秋になると、周りが見て分かるほど調子を崩し、元気を無くしていたから。


あのとき4才だったお姉ちゃんは、中学2年生。大きくなったね。火葬場では、この子の方が死んでしまうのではないか、と心配になるほど大声で泣き叫び続けたんだよね。4才の子供が人の死を理解していたとは思えないが、ずっと近くにいたお母さんが永遠にいなくなってしまう、ということは何となく分かったようだった。
お義姉さんに抱かれることも、母乳も飲むこともできなかった下のチビ。どんどん、大きくなるね。いつも元気で、おしゃべりで、よく笑って、お姉ちゃんとケンカして、でもやっぱりお姉ちゃんと仲良しで。お義姉さんも気に入っていた名前を付けてもらったこと、本人は知っているのかなぁ。


ふたりとも、今のお義姉さんと 「ママちゃん」 と呼ぶ。 「お母さん」 は、亡くなったお義姉さんのことだから、なのかな。それでも以前は今のお義姉さんのことを 「Mちゃん」 って名前で呼んでいたから、これでも大きな進歩なんだよね。
いつでもお母さんと会えるように、と和尚さんが戒名に 「月」 の字を入れてくれたこと、上のお姉ちゃんは覚えているのかな。わたしはいつも、お月さまに向かって話しかけているけど。覚えているのかどうか、いつか聞いてみたいな。



仕事帰り、何度も空を見上げたが、お月さまは見えなかった。
実家のお母さんから 「今日はお寺さんに行って、Lの分もお線香をあげてきたよ」 とメールが届いていた。 「チビたちは学校だから来られなかったけど、お兄ちゃんとママちゃんが来て、一緒にお線香をあげてきました」 とも。きっとお兄ちゃんもママちゃんも、チビたちが大きくなったこと、元気に過ごしていることをお義姉さんに伝えたんだろうね。いつも、私のお母さんとお父さんがチビたちのことを仏壇に向かって話しているから、よーく知っているよね、お義姉さん。


お月さまが見えないから、お義姉さんにもらったクマさんと一緒に寝ることにするよ。おやすみなさい。。。