家族のバランス


キョロキョロと探していた会社のご近所のキンモクセイ、大きい木だったんだねぇ。。。鮮やかな色の花が目立たないから、香りだけで探したよ。のっぽビルの警備員さんに睨まれながら 「写真だけ・・・てへへ」 とヘラヘラして急いで撮った写真。頭が切れてるし。
これだけ大きな木だから、香りが届く範囲もとっても広い。そりゃぁ、見付けるのも大変だわ。どこからともなく風に乗ってくる甘い香り、 「ん?」 と辺りを見回すスーツ姿のサラリーマン、秋だけの楽しみだ。


17日がチビの誕生日、ということは三日後の20日はお義姉さんの命日。
秋、家族ひとりひとりの心が、そして家族としてのバランスが、少しだけ崩れかかる。実家で仏様を守る私の両親、実家から離れて住むお兄ちゃん、お母さんの記憶が残る上のチビ、写真でしかお母さんを知らない下のチビ、数年前にお嫁に来てくれたお義姉さん、娘を失ったご両親、そして遠く離れて暮らす私。
皆それぞれが色んな思いを抱え、少しだけギシギシと音を立てる。家族にしか聞こえない、微かな音。だけど確実にどこかで鳴っている音。自分の音を家族に聞かれないように別の音で覆い、他の家族の音が聞こえていても気付いていないように振る舞い、お互いが気を遣い合う。それを続けることで、ひとりひとりが疲れ切ってしまう。



思い出もあるし、忘れたくないこともたくさんある。今、生活している環境の中で、それらを封じてしまわないといけないこともある。誰かがタクトを取り、 「さん、はいっ!」 と一斉に同じ方向を向くことができたら、どれほど楽だろう。
毎年、そう思っては、私も小さくギシギシと音を出してしまう。季節が巡って秋が来ると、厳しい寒さが来る前に、少し冷たい風が家族の心に吹く。間違いなく秋が来るように、家族にも必ず。


来年は13回忌。いつもは家族がお墓参りをしたり、お義姉さんのご家族がお線香をあげに来るだけだが、法事となると別だ。それぞれのギシギシ音は増し、土台はグラつくだろう。誰かの発する言葉に過敏になったり、それぞれの心の中が気になったり。でもそれを口に出せずに、そっと仕舞いこんで自分の中だけで消化しようと苦労したり。


ひとりひとりが手を合わせながら、心の中でお義姉さんに話し掛けるんだよね。何て言っているのかな。それは、その人とお義姉さんだけの秘密なんだよね。几帳面なお義姉さんだったからきっと、ひとりひとりにしっかりお返事してくれているんだろうなぁ。その声は聞こえないけど。
お義姉さん、今日は雨でお月様が見えないよ。命日にはちゃんと、顔を出してちょうだいね。