秋の一日

先日、ある国家試験を受験した友人。ここまで頑張ってきたことを知っているので、 「終わったー!」 のメールをもらったときに 「じゃぁ、美味しいモノでも食べに行こうか。はとバスで日帰り旅コースで出かけるのもいいね」 と返信をしたところ、 「いいねぇ、温泉に入りたいと思ってたんだ」 とのお返事。 「じゃぁ、決定!」 ということで、山梨方面のコースで日帰り旅をすることになった。紅葉には少し早いかなぁ。


7時過ぎに浜松町バスターミナルに集合。5時起きで眠い私と、飲み会で夜中1時に帰宅したという友人とでバスに乗り込んだ。平日だというのに、バスは満席。紅葉シーズンだからねぇ。お母さんぐらいの年齢の女性グループとご夫婦が多いかな。若いギャルギャルちゃんグループもいるね。歳をとってから、こういうツアーバスで旅ができるご夫婦ってイイなぁ。やっぱり健康第一だね、なんて思う。



最初にバスを降りたのは、昇仙峡。ここに到着するまでの山道では、紅葉もチラホラ。真っ赤に染まる紅葉にはまだ少し早かったようだが、山全体が黄色っぽくなっており、ところどころに赤い色がみえるぐらい。風が吹くと葉っぱが舞うのは、やっぱり秋だねぇ。


駐車場でバスを降り、ここから食事までは自由散策の時間。全員が 「仙娥滝 (せんがたき) 」 を目指して歩き出した中、私たちが向かったのは 「夫婦木神社」 。バスから見えた、神社脇のこの紅葉がとてもキレイだったからだ。いやぁ、本当にキレイ!

小さな神社だが、立派な鳥居。鳥居越しに眺める紅葉、白と赤が対比して、何とも言えない風景。風が強いから、空も真っ青で澄んでいる。空気が透明な感じがするね。思わず深呼吸。うーん、オイシイ!
神社は安産や恋愛成就など、男女のご縁にご利益がある神社らしい。男女一緒に参詣すれば必ず結ばれ、夫婦で参詣すれば必ず子宝に恵まれると言われているそうだ。そうだねぇ、この景色を一緒に見たら、それだけでご利益がありそうだもん。



林道開発時にこちらに移された檜の御神木。樹齢800年だそうだ。三本になっているが、もともと一本の木。どれほどの巨木だったのだろう。切り出されたあとも生きているそうで、左の木の割れ目を嗅いでみると、もの凄い芳香がした。檜の濃い香り。通常の切り出された檜よりも、もっともっと濃い香りがする。この木は呼吸しているというのが、この香りで分かるという。
真ん中の、割れ目のある太い部分。これは女性を象徴しているという。安産祈願の前段階もクリアしていないが、また健康診断で婦人科系が要精密検査だったから、時間をかけて触らせてもらい、じっくり手を合わせた。


こちらは、先ほどの木の根の一部。根といっても、あれほどの巨木。空洞の幹、と言ったほうがいいのかな。大人ふたりで両手を広げて囲っても届かないほどの大きさだ。

手前の空洞から中に入ってみると、男性の象徴の突起があった。突起は後付けしたものではなく、もともと付いていたものを成型したものとのこと。御神木が切り出された山はラジウムがたくさん発生する山だったそうで、この木や根も天然のラジウムでいっぱいだそうだ。この神社がパワースポットと言われていることを知ったのは、家に帰ってからだったんだけどね。


友人は目に見えない力やパワーを信じる人間、私はそれらは全く信じない人間。今回は宮司さんのパワー話を夢中で聞いていた私を見て友人が 「Lが宮司さんの話に引き込まれるなんて意外!」 と笑っていた。何だかとにかく清々しくて、あらゆるものが 『キレイ』 な感じがしたんだよね。こちらの神社で写真を撮ると、よくオーブが映るそうだ。いつもなら 「光の加減でしょ」 なんて言うところだが、今回はデジカメとにらめっこ。 「ねぇ、これがそうかなぁ」 と何枚も写真を眺める私に付き合う友人。いつもと逆だね。
この岩戸も、中はラジウムが充満しているそうだ。


岩戸の中。
本当だ、札に書いてあるよ。 「此の岩戸の中、ラジウム放射線充満」 って。どうかなぁ、と深く息を吸ってみるが、やはり目に見えないものだから分からないね。ただ、これだけ山々に囲まれた地域なのに、ラジウムが出るのは御神木のある山だけだというから、昔の人たちは体で何かを感じていたのかな。
女性はラジウム、男性はウランとあったので、ラジウムの方をしっかり撫でてみたよ。



思いがけず、ふと立ち寄った神社でかなりの時間を使った私たち。名残惜しいが、 「このままじゃぁ、滝が見られないよ」 と慌てて散策へ戻った。同じツアーの人たちの中にはもう、こちらに戻って来ている人もいるね。あらら。


暫く歩いて、長い階段を下りるとそこには、この景色が待っていた。 「仙娥滝 (せんがたき) 」 。周りの紅葉はまだまだだったが、水量の多い滝は迫力いっぱい。水しぶきが霧のように顔に当たる。滝の最上部にせり出した木々の枝が、もの凄い勢いで暴れている。
水のある景色はイイなぁ。しっとりした空気の中、身も心も洗われるような気がする。滝をバックに写真を撮るおばちゃんたち、三脚を立ててじっくり写真を撮るおじちゃん、携帯電話のカメラでバシバシと撮るギャルギャルちゃんたち、それぞれが楽しそう。観光地ならではの光景だね。
いつ頃からかなぁ、自分が入った写真を撮らなくなったのは。修学旅行や家族旅行では必ずみんなで写真を撮っていたけど、今は人物を撮っている人って少なくなった気がするなぁ。
食べ物を撮ったり、面白いグッズを撮ったり、緑を撮ったり。デジタルカメが普及して、誰でも気軽に写真が撮れるようになったからなのかなぁ。滝を眺めながら、そんな時代の移り変わりを想う妄想モード。いかん、いかん!何やってんだか。




自由散策の時間が終わり、集合場所の駐車場へ。ほらほら、たくさんのバスの後ろにみえる山も黄色くなってきているよ。こういう景色だと、待ち時間も楽しいね。


全員が揃ったところで、昼食。歩いたから、お腹が空いたー!
山梨といえば、ほうとう。それにきのこご飯と諸々ね。長い長いテーブルにズラーッと並んで食べるなんて、学生寮以来かも。賑やかで楽しいね。早めに食べ終えた私たちは、満腹のお腹のまま、近くの喫茶店へ。コーヒーを飲みながらまた、おしゃべり。




山梨といえば、ワイン!ということで、次の目的地は 「シャトー酒折ワイナリー」 。
まずは、製造工場の見学。この日は稼動しておらず眺めるだけだったのと、フロアー移動で階段が多かったため、腰の悪い私は断念。友人とひと足さきにショップへ行き、お目当てのにごりワインを試飲。何と飲みやすく、イイ香りのワインなの!普段、好んでワインを飲むことはないが、これは美味しいなぁ。
あーあ、帰りの電車のことも考えず、重い重いお土産を買い込んでしまった・・・。




山梨といえば、ぶどう!ということで、次は勝沼のぶどう園 「一古園」 さんでのぶどう狩り。ほらほら、マンホールの蓋もぶどう!
園内では、ぶどう食べ放題!大好物のぶどうを好きなだけ食べられるということで、テンションの上がる私。友人は 「ひと房は無理だなぁ。半分が精一杯」 と言うので、巨大なひと房を半分ずつ食べた。皮まで食べると体にイイ、というので、皮ごと口に放り込む。うーん、美味しい!お菓子を食べるように、皮も種も一緒にムシャムシャ。結局、友人の分も半分ほどもらってしまった。帰りは甲州ぶどうをひと房、お土産にいただいたよ。



旅の最後は、 「ほったらかし温泉」 。近くの有名な石和温泉とは、源泉が全く違うそうだ。お客さんをほったらかしにするのかなぁ、と思っていたが、バスガイドさんのお話によると、温泉を掘り当ててから暫くほったらかしにされていた温泉なので、この名前になったそうだ。お風呂は2箇所、 最初にできた「こっちの湯」 と、後からできた 「あっちの湯」 。あっちの湯の方が広さが2倍と聞いたので、あっちの湯に入った。
新三大夜景のひとつに選ばれた場所の温泉ということで夕方に到着したのだが結局、日の入りには早かったんだよねぇ。それでも露天風呂から眺める富士山は美しく、浴槽脇のススキ越しに眺めていると、時間が経つのを忘れた。


富士山。美しく狂いのない形が、日本一の称号を更に輝かせる。ガイドさんは 「富士のお山」 って言ってたな。
夕焼けに染まる富士山、あー、なんて美しい。一日の終わりが、この風景でよかった。



バスの中から新三大夜景を眺めながら温泉を後にし、帰路へ。長い一日だったなぁ。友人は東京の手前まで眠っていた。お疲れちゃんだったもんね。今日はありがとう。ステキな秋の一日になったよ。