安堵と怒りと

昨夜の23時、お母さんから電話があった。
上のチビが交通事故に遭った、と。
部活を終え、駅から自転車で家に帰る途中、車にはねられたらしい。意識がなく、学校に連絡が入り、そこからうちに電話で知らせがあった。学校帰りだったから、制服や持ち物で通っている学校だけは分かったのだろう。
連絡が入ってすぐにお義姉さんがタクシーで病院に向かい、お兄ちゃんは単身赴任先から車で病院に向かっている。命は大丈夫だが、フロントガラスに頭をぶつけているので、その後遺症が心配。


お母さんからの情報はそれだけだった。曖昧で、状況が分からない。怪我の状態はどうなのか、病院で意識は戻ったのか、お義姉さんも会わせてもらえず、ただ待っていることしかできないとのこと。お母さんはとにかく、仏壇に手を合わせていると言っていた。


朝、お母さんに電話をしてみた。お兄ちゃん夫婦は、朝方になって帰ってきたとのこと。
チビの命に別状は無いとのことで、ホッとした。少しだけチビに会うことが許され、チビの名前を呼んだところ、目を開けたそうだ。ただ、痛い・・・痛い・・・と言っていて、本当にかわいそうだった。顔にも傷があり、消えない傷になりそう、とのこと。
ふたりとも疲れた様子で、少し休んで10時に警察署に行かないといけない、と言って部屋に入ったそうだ。お兄ちゃんは高校生の時に大きな怪我をしたため出席日数が足りず、2年生を2回やっている。そんなことも思い出したかもしれない。
お母さんが、今朝の地方新聞に載っている事故の記事を読んでくれた。チビは意識がなかったので 「高校生」 とだけ書かれていた。事故は運転手が赤信号で交差点に入ってきたために起きたこと、運転手は年配の男だったこと、車はワゴン車だったこと。それぐらいしか分からなかった。


今週末、チビの高校は文化祭。チビは1年生で初めての文化祭をとても楽しみにしていて、音楽部でのステージのために、毎日遅い時間まで部活を頑張っていた。とにかく学校生活も部活も楽しい!と言って通っているチビだから、かなり張り切っていたことだろう。
高校までは遠いので、朝早く起き、夜遅く帰る。それでも毎日、楽しそうに通っている。もうすぐ家に着く、というところでの事故。どんなに怖かっただろう。怖い、と思う間もなかったかもしれない。


昨夜は眠ることができず、落ち着かないのでコンビニに行った。空には、月がとても明るく輝いていた。あの月は、亡くなったお義姉さん。お義姉さんに向かって 「チビを助けてね。まだお義姉さんのところには連れて行かないで!」 とお願いした。
いくつかの大きな辛いことを経験してきたチビに、もうこれ以上、辛い思いをさせないで。ずっと、そう祈ってきた。どうしてこの子は、こういう辛い状況に置かれてしまうのか。あのまま、楽しいままに暮らせないのか。
とにかく今は、頭を打っているチビの容態が安定してくれることだけを祈るしかない。