キッチンバサミ様さま

さぁ、アスパラとベーコンを炒めよう。
まずは、熱したフライパンに油を引く。次に、フライパンの上でアスパラをキッチンバサミで斜めにチョキチョキ。長いベーコンもキッチンバサミでチョキチョキ。塩コショウで味を整えて完成!うーん、簡単。洗い物は、フライパンと菜ばしだけ。
いつの頃からか、ひとり暮らしの手抜き料理は、こんな感じになっている。アスパラにベーコンをくるくる巻いて、なんて面倒なことはしないもんね。時にはオクラをチョキチョキ、またある時には油揚げをチョキチョキ、なるべくハサミでチョキチョキ。
まな板や包丁を使わない理由は、洗い物が増えるから。ただそれだけ。ひとり暮らしにしては広めのキッチンなのだが、それでもまな板とフライパン、ザル、ボウルなどを一気に使うと、洗った後の置き場所が大混雑する。もっとスペースに余裕があったら、まな板と包丁でやりたいんだけどなぁ。←ホントか!?


しかし、こうチョキチョキしている姿を昔の自分が見たら、驚いて卒倒するだろうね。
あれは、上の姪っ子が生まれて暫く経った頃。帰省して、みんなでご飯を食べていたところ、チビの食べていた野菜が少し大きいからと、お義姉さんが器に入ったままの野菜をキッチンバサミでチョキチョキ。
へっ!?もしかして今、食べ物にハサミを入れた!?
食後に果物を食べる時も、お兄ちゃんがチビの果物をお皿の上でチョキチョキ。
へっ!?お兄ちゃんも、食べ物をハサミで!?



もちろんその時、自分の家でも台所にキッチンバサミを置いてはいたが、それは海苔の袋を開けたり、残り少なくなったマヨネーズのお尻を切ったり、納豆についてくるカラシの口を切ったり、そういうことにしか使っていた。要するに、私の中のキッチンバサミは 「少々、濡れても大丈夫な、台所で使うハサミ」 というだけで、 「食材を切る」 なんてことは考えたこともなかったのだ。
ましてや、食べ物を包丁ではなくハサミで切るなんて、そんな非常識な!
小姑は、唖然とした。

じいばあの部屋で寝る前、小姑は、姑に訴えた。 「食べ物をハサミで切るなんて、ちょっとどうなのよ」 
すると姑は、 「オラも最初はそう思ったぁけど、使ってみっと便利だっけぇがえぇ。キッチンバサミって、あぁいう風に使うんだぁねぇ」 だって。なぬぅぅ!姑は既に、こっち側の人じゃなくなっている。あー、なんてこった。
それから帰省のあいだ中、食事の度にチョキチョキされるチビのお膳。小姑も慣れてきたのか、だんだんと 「あら、このメロン、ちょっとチビには大きいねぇ」 なんて言いながらチョキチョキするようになっていた。
プチ切れしていたクセに、染まりやすい小姑。。。


一度染まったら、そこからはもう・・・。 「食べ物にハサミを入れる」 という、今までの自分の中のタブーがタブーでなくなったんだから、ね。
そういえば、焼肉屋さんではお肉をチョキチョキするね。お料理番組でも、唐辛子をハサミでチョキチョキやってるじゃん。そういえば子供の頃に、食べ物にチョキチョキした記憶があるよ。冷たいおそばの時の、焼き海苔。お母さんがコンロで炙った海苔を渡され、ハサミで細くチョキチョキしたよね。
うん、チョキチョキはアリ!だ。


うちのキッチンバサミは10年選手。古くなってきたし、そろそろ買い替えようかなぁ。うちに来るキッチンバサミは、出番が多くて過酷だぞー!