何でだろうね

今朝の通勤電車にて。
自宅の最寄駅で電車に乗り込むと、珍しく空席を発見。今日はお弁当もあるし、書類もあるし、とにかく荷物が多くて座りたかったんだよね。ラッキーだ。
調べたいことがあったので、スマホを取り出して検索し、諸々調べていた。隣駅に着いてドアが開いても顔を上げることなく、スマホの画面に夢中。調べものが終わって顔を上げたのは、ドアが閉まって電車が走り出した頃だった。



目の前には、杖をついた男性が立っていた。60歳ぐらいだろうか。縦にも横にも体が大きい人だ。慌ててふたつのバッグを抱えて立ち上がり、 「すみません、気が付かなくて。どうぞ」 と声を掛けた。
するとその男性は、優しい笑顔で 「すぐ降りるから、大丈夫ですよ」 と言った。 「いえいえ、どうぞ」 と言ったのだが、もう一度、 「大丈夫ですよ」 と言われた。とても柔らかい表情をする人だった。


不自然に空いたその席を眺めてどうしようか迷ったが、男性は座る様子がないので 「じゃぁ、すみません」 と言って、また座った。
とはいえ、目の前にはその杖をついた男性が立っている。顔を前に向けたまま座っているのも何だし、かといって寝るのも何だし、困った私はスマホを取り出し、どうでもいい画面をちょこちょこいじっていた。
次の駅で、また人が乗ってきた。男性は私の前に立ったまま、私はスマホをいじったまま。電車が走り出す。この駅で乗ってきた人たちは 「コイツ、スマホなんていじってないで、席を譲れっつーの!」 と思っているに違いない。きっと今、私は悪魔としてみんなの目に映っている・・・と思う。
あー、つらい。こんなことなら、席を空けたまま私も立っていればよかった。何で、座っちゃったんだろう。。。


そう思っているうちに、電車は次の駅に着いた。杖をついた男性は、この駅で降りるようだ。
顔を上げて男性を見ると、笑顔で 「じゃ、ありがとう」 と言って、降りて行った。私は 「お気を付けて」 としか言えず、その顔は引きつった笑顔。なんて格好悪いんだ。。。


男性が居なくなった電車は、また次の駅に向かって動き出した。私が降りるのは、更に3駅先だ。
再びスマホを取り出して数独をやり始めたのだが、なぜだか涙が滲んできて止まらない。何で泣いているんだ?私。何で、何で?何で泣きながらパズルをやっているんだ?理由は分からないが、そこから3駅分、私は目にいっぱい涙を溜めながら、スマホの画面を眺めていた。
男性に座ってもらうことが出来なかったからなのだろうか。座り続けたことへの罪悪感だろうか。周囲から 「冷たい人間」 と見られていたかもしれない辛さなのだろうか。自分でもよく分からない。自分のことなのに。
そんな、朝の出来事。