踏切と桜と


踏切が開くまでの待ち時間、桜の木の下に立っているだけで 「今日だけは、開かずの踏切になってイイんだよー」 ってな気分になる。


同じように隣に立つご婦人が、桜を見上げながら話し掛けてきた。
「キレイねぇ。遠くまで出掛けなくても、ここで充分。十日だけの命だもの、キレイに咲かなくちゃね」 
あれれ?私に、じゃなくて、桜に話し掛けたのかな。


公園の中を一緒に眺め、 「枝垂れもキレイねぇ」 「そうですねぇ」 「あと少しねぇ」 「そうですねぇ」 。短い言葉のやり取りをひとつ、ふたつ。それが何とも心地良い。


踏切が開き、 「失礼しました」 と立ち去るご婦人に 「お気を付けて」 と、桜の代わりにご挨拶。
桜がくれた、ほんの数分間のご縁、ね。ふふふ。