秋の三連休…1日目


昨夜、深夜バスで品川を出発し、宮古に帰ってきた。若い時と違って、深夜バスはキツいなぁ。
しかし、さすが岩手。寒いっ!
うちは実家ごと内陸に引っ越してしまったので、お泊まりはお母さんの実家。おじいちゃん、おばあちゃん、おじちゃんが亡くなり、従姉妹たちも町を離れたため、家にはおばちゃんがひとり暮らし。
今日から三日間、よろしくお願いします!


宮古はもう寒く、ストーブを使ってた。
ニャンコのハルちゃんは、特等席で朝の洗顔
ハルちゃん、この家に拾われて、もう16年になるんだっけ?もう、おばあちゃんだね。
寄ってきて、体をスリスリ。久しぶり!のご挨拶、ありがとうね。めんこいなぁ、ハルちゃん。うちの守り猫だもんね。


お煮しめにたらこ、浅漬け、ご飯にお味噌汁。普通の朝ご飯。
普通すぎて、たまらん!


おばちゃん、昨夜からお煮しめ作って待っててくれたんだね。もう、最高!



あっちも、こっちも、古いガラス。
このガラスを見ているだけで、昔の賑やかだったおばあちゃんちの画が頭に浮かぶね。


天井から吊るされた虫よけバポナも懐かしいな。お泊りするとき、布団に入るといつも、目に入ったもんね。今でも売ってるのかぁ。



亡くなったおばあちゃんが、若い頃に買った日立製作所のジューサーミキサー。すごく可愛らしいデザイン!と思って調べたら、1972年のグッドデザイン賞をもらった商品だった。やっぱりねぇ、ステキだもん。おばあちゃん、大奮発して買ったから、大事に使っていたんだろうねぇ。

これ、今も現役。おばちゃんが野菜ジュース作りに、毎朝使っている。そのジュース、私も三日間、飲むのよね。色は不気味だけど、美味しいねぇ!
ヘルシー食事の話題で盛り上がるふたり。やっぱり、野菜を摂らないと、だよねぇ。おばちゃんちの実家は農家さん。たまにもらってくるそうで、台所には新鮮な野菜がいっぱい。あー、何て羨ましい!


とにかく、何もかもが 「ほっ」 とする空間だ。体の芯からゆるんでいくのが分かる。


おばちゃんが、実家に野菜とお花を取りに行く、というので、私は町をぶらぶらすることにした。
最初の行き先はやっぱり、三陸鉄道宮古駅。乗る時間はないけれど、毎回買うピンバッジやクリアファイルなどのグッズをチェックしないと、ね。


車両の写真を撮りたくて、窓口の女性駅員さんに 「写真を撮りたいので入場券をください」 と言うと 「あ、入ってイイですよ。どうぞ」 とのこと。あー、やっぱり三鉄ってイイなぁ。


ボディには 「クウェート国からのご支援に感謝します」 の文字。震災復興の三鉄車両がクウェート義援金で造られたのは、県外にはあまり知られていないのかな。


三鉄全線開通のあの日、線路脇でたくさん振られた旗の中には、クウェートの国旗もいっぱいあったよね。クウェート関係の方々もご招待して、旗を見てとても喜んでくださったって。
とても有難いことだし、それを忘れないよう、そして乗車する人たちにも知ってもらうよう、ボディにプリントしている三鉄もまた、素晴らしい。



宮古のパン、といえば私にとっては相馬屋のあんぱんだが、今日はおばちゃんちにお世話になるので、おばちゃんがお気に入りのパン屋さん 「Tamiser(タミゼ)」 の方に寄った。相馬屋さんまではここからまだ歩かないと行けないので、ちょっとしんどかった、というのが正直なところかな。
こちらのパン屋さんは私も大好きなハード系のパンが多く、ザ・職人!という風貌のご主人がおひとりでお店にいらっしゃる。噛めば噛むほど美味しさが溢れてくる、そんなパンだね。


うちもそうだったが、おばあちゃんちも、歩いて数分で海に出る。
町をぶらぶら歩いでバスで帰る途中、バス停をひとつ先で降りて、昔よく泳いだ海の前に立った。この場所の波はあの日、国道を越えてガソリンスタンドやレストラン、ゴルフ練習場、同級生の家などを次々と破壊した。おばちゃんはあれから暫くの間、この海の前を通るだけで動悸が起こり、具合が悪くなったという。
子供の頃は、水着を着て浮き輪を付けたまま、おばあちゃんちからこの海に泳ぎに来たものだ。景色は、あの頃と変わらないのになぁ。


砂浜を、端から端まで歩いてみた。あの頃より、上手に歩けない。足元が安定している波打ち際を歩いてみるが、やっぱり上手に歩けない。砂浜は、それ以上に不安定だ。
あー、もしかしたら、昔もこんなモンだったかな。記憶なんて、当てにならないものだもの。何となく、海辺も秋っぽいね。8月のお盆になると、地獄の釜の蓋が開くから泳いじゃダメだと言われたよね。そう言われたとき、この海の沖の方に、ぽっかりと大きな穴が現れて、滝のように水が流れ落ちる画を想像したっけ。あれは、何歳ぐらいだったかなぁ。



暗くなってきたので、のんびり歩いて家に帰ると、おばちゃんは先に戻っていた。
「野菜いっぺぇ持ってきたぁがら、東京さ持ってってね」 とおばちゃん。ニンジンやジャガイモ、かぶ、大根、白菜、カボチャなど、艶々した野菜たちが台所にいっぱい並んでいた。やったー!明日、宅配便で送るね。ありがとう!
おばちゃん手作りの晩ご飯を食べ、いっぱいいっぱいおしゃべりをし、どっぷりのんびりモード。大人になったから出来るおしゃべりもあるよね。楽しくて、寝るのがもったいないよー。


ハルちゃんも、おしゃべりを聞いているのかいないのか、私たちのそばを離れない。時々、 「もう、寝ようよー」 的な声を上げるんだけど、止まらない私たち。諦めて、自分だけ寝ちゃった。
体操選手みたいな格好で、可笑しい。


「まだ、それほど寒ぐねぇがら、2階に布団敷いだぁがらね」 とおばちゃん。この家の2階は冬、凍えるほど寒い。今日ぐらいだと、まだ大丈夫だね。
2階の廊下の照明は、私が小さい頃から変わっていない。こういうものを見ると、体全体が溶けそうなほど温かくなる。
ダメだ!この家にいると、そのうち体が溶けて無くなってしまうかもしれん!


ま、それもいいかな。明日は、お母さんも宮古に帰って来る。