長崎のんびり旅行 2日目・・・20,592歩


昨日、たくさん歩いたわりには、元気に起きられた朝。時間の約束もなく、ただ 「明日は、伊王島に行こう!」 と友人と決めたのは、昨日の夕方。朝、その友人から電話。 「フェリーの時間、8時50分の次は10時15分だって。どうする?」 と。どうするもこうするも、今、8時30分じゃん。無理!10時台にしてくれい!
友人がホテルまで迎えに来てくれ、海辺を歩いて長崎港のフェリー乗り場に到着。天気予報では、今日の午後からお天気が崩れるらしい。何とか、お天気が持ってくれるといいなぁ。朝より、雲の厚さが増している。長崎港から伊王島へは、フェリーで20分ほど。お船に乗るなんて、久し振りだなぁ。平日なので、乗船する人も少ない。


暖かかったので、デッキに出てみた。この雲だもんねぇ、ちょっと心配。フェリーは順調に伊王島へ向かう。
この立派な橋は、女神大橋 (愛称 「ヴィーナスウイング」 ) 。大波止ターミナルを出て暫くして、この女神大橋の下をくぐった瞬間は気持ちよかったぁ!お天気が良かったら、青い空に女神大橋の白が光って見えるんだろうなぁ。
結局、伊王島までずっと、デッキから長崎の町や海を眺めていた。
のんびりと、グダグダと。

伊王島に到着。あー、早いなぁ。もうちょっと、フェリーに乗っていたかったぁ。港には、釣りをしているおじちゃんがいっぱい。みんな、のんびり。いいねぇ、いいねぇ。せっかちな友人は、釣りが苦手だそうだ。

フェリー乗り場の前には、大きなリゾート宿泊施設。温泉に入るのは、ココだね。歩いてすぐの距離なのに、送迎バスが停まっている。せっかくだからお世話になった。走ったと思ったら、すぐに到着。あまりに近すぎて、ちょっと笑っちゃった。
建物に入ると、右手に大きなお土産売り場。どこでもすぐ、お土産を見に行ってしまう私の背中に、友人が 「温泉に入る前に、自転車に乗ろうよ」 と言った。自転車、大好き! 「うん、いいねぇ」 と、チャリをレンタル。カウンターのお姉さんに 「電動自転車を2台」 と言う友人に 「電動自転車!?普通でいいんじゃない?」 と私。 「いやいや、乗ってみたら分かるから」 と言う友人に従い、いざ出発!

自転車、めちゃめちゃ楽しかったー!風、本当に気持ち良かったー!電動自転車、楽だったー!・・・平らな道では。イイ大人ふたりが、チャリで激送。黙々と前を走る友人と、 「気持ちイイー!」 を連呼しながら走る私。両極端なふたり。他の人が見たら、ツレだと思わないだろうなぁ。走ることと景色に夢中で、写真なんて1枚も撮っていないもん。
でも、気持ち良かったのも前半だけ。 「上るよ!」 の友人の言葉でスタートした延々続く、上り坂。電動自転車とはいえ、漕ぐのは自分。いやぁ、しんどかったぁー!おいおい、道案内よ。この上り坂の詳細説明はないんかいっ!どこまで続くの!?



ゼーゼー言いながら上りきった坂の天辺は、夕陽ヶ丘展望所。
お天気が良かったら素晴らしい眺望らしいが、分厚い雲がかかる生憎のお天気。でも、そこからの眺め、良かったなぁ。海も空も開け、何も考えられない。頭の中は 「あー・・・」 それだけ。お天気がイイ時の眺めを知っている友人は、 「あー、もったいないなぁ。お天気がなぁ」 を繰り返していた。いやいや充分だよ。ありがとう。
無料の望遠鏡があったので覗いてみると、軍艦島が見えた。離れているだけに、余計にその影は軍艦っぽい。そういえば、軍艦島ツアーっていうのがあったねぇ。お天気が崩れると中止になるみたいだから、明日からはダメかなぁ。

展望所からの帰りは、快適な下り坂。容赦なく飛ばす友人と、ブレーキが甘い自転車ながらも追いつこうと必死な私。海を眺め、十字架だらけの墓地を眺め、あるカーブを曲がったところで友人が 「何かいるー!」 と叫んだ。何と、道路のド真ん中に野生動物出没!田舎でいつも見ていたタヌキよりもスマートだから、ハクビシンかなぁ。道路の真ん中に居て、近付いても避けない。写真、写真!と思って荷物をガサガサやっている間に、逃げられちゃった。残念。

坂を下りきり、やっと温泉に到着!と思いきや、通り過ぎてしまう友人。自転車を漕ぎながら 「お風呂はー!?」 と聞くと、 「もうちょっと走ってから!」 とのお返事。その目線の先には、教会があった。あー、フェリーから見えた教会だね。



高台に建つ教会、素晴らしかった!伊王島は、島民の6割がカトリック教徒だそうだ。どの教会を見ても思うことだが、中に入ると床も椅子もどこもかしこも磨き上げられていて、大切にされていることが良く分かる。この馬込教会も、そういう教会だった。禁教の時代、教徒たちはどんな日々を過ごしていたのだろう。キレイに彩色された天井を見上げながら、静かな教会の中でいろんなことを思った。

ここのマリア様は手を合わせ、顔は少し上を向いていた。優しい微笑み、というよりは、とにかく天に祈り続けている。そんな印象。


ここで、ちょっとしたトラブル。この旅行に連れてきた、とっておきのポラロイドカメラ。目の前にいる、この友人からもらったものだ。カメラを取り出すと、 「おっ、いいカメラ持ってんじゃん!」 と友人。 「そうでしょー、いいカメラでしょ!」 とニヤリ。さっそく、天主堂にカメラを向け、シャッターを切った。ん?フィルムが出てこない。もう一度、シャッターを切った。ジーっと鈍い音がし、フィルムが2枚出てきた。なぬー!?
それから何枚か撮ってみたが、やっぱり2枚がズレて出てくる。あー、神様。もう、二度と来られないかもしれない土地で、こんなことが・・・。 「フィルムがダメなんじゃない?」 と友人。確かに、もう製造していない、使用期限の切れている最後のポラロイドフィルムを入れた。最後のフィルムだから、特別な時に使おうと取っておいたのに、何ということだ。ガッカリ。
落ち込む私に、 「戻って、ご飯でも食べよう」 と言う友人。そうだね、カメラ自体は大丈夫そうだもんね。気を取り直して、温泉に向かった。



レストランで、海の見える席に案内されながら歩いていると、 「食べたい、って言ってたもの、ココにもあるんだよ」 と友人。そう、私が食べたい!と言っていたのがこれ、 『トルコライス』 。
長崎の街を歩いているとき、よく目にした看板がトルコライスだった。いろいろアレンジされたものも多く、昨日、Oさんと一緒に見たお店では 『龍馬トルコ』 なるものもあった。
こちらのトルコライスは王道。カレーピラフの上にデミグラスソースのかかった豚カツ、ナポリタンスパゲティー、サラダがワンプレートに。ものすごいボリュームだねぇ。サクサクの豚カツ、美味しかったなぁ。大満足!


私に付き合ってトルコライスを食べながら、友人が言った。 「フェリーさ、次のが行くと2時間後なんだよ。次のに乗ろうよ」 「えー!だって、あと何十分?そんなに時間ないじゃん。温泉、ゆっくり入りたいよー!」 「でも、ここで2時間待つって、大変なんだよ。大丈夫、温泉入れるから」 「大丈夫?いやいや、女子は時間が掛かるんだって。顔も洗えないじゃん!」 。
そんなやりとりをしたが結局、次のフェリーで帰ることに決めた。


何とか無事に温泉に入り、お土産屋さんで買い物をし、フェリー乗り場へ向かった。
まだ少し時間があるというので、郵便局に寄りたい!とお願い。伊王島の風景印を押してもらいたかったのだ。長崎らしいハガキを買い、切手を貼って、丁寧に風景印を押してもらった。風景印を押すのに、何度も練習をしてから押してくれた局員さん。親切だったなぁ。
そんなものには全く興味の無い友人は、 「女子って、変わったことが好きだよねぇ」 と呆れ顔。いやいや、女子に限らず、 「旅先では郵便局に寄って風景印を」 っていう人、いると思うけどなぁ。どうなんだろう。



伊王島とは、ここでさよなら。楽しかったなぁ。今度来る時は、ゆっくり泊まりたいな。
帰りのフェリーから眺めた、長崎の町。山の斜面に、びっしりと家々が建っている。面白い景色だなぁ。うちの田舎にもこういう町はあるが、それが港を囲んでずーっと続いているのが凄い。そっか、うちの田舎はそんなに人口が多くないんだもんなぁ。
そして、堤防がない。確かに、横浜みたいな大きな港町も堤防がないけど。こんなに海が目の前にあって、これだけの人口があって、そんなところに波が襲ってきたらどうなるんだろう。私の思考は常に、そこに行ってしまう。


オマケ画像。フェリーの中にあった警告板。 「お船が完全に桟橋に着船するまで・・・」 。
お船』 っていう言葉が可愛らしくて、つい撮ってしまった。うふふ。

港に着いてから、寺町通りを目指した。温泉に入ったとはいえ、久し振りに自転車で激走した後なので、何となく足が笑い気味。長崎観光は、体力が要るわぁ。それでもやっぱり、見知らぬ土地のぶらぶら歩きは面白い。唐寺 「宗福寺」 の赤は鮮やかだったなぁ。
思案橋郵便局の前で、友人に 「あ、郵便局あるよ。寄る?」 と言われ 「寄ってもいい?」 と私。ここでまた長崎のハガキを買い、風景印を押してもらった。わーい!ここの女性局員さんも親切だったなぁ。何度も練習してから押してくれて。

   
人とすれ違うのがやっと、というほどの細い路地を歩きながら、ふと目に入った町名板。仕事柄、こういう表示が気になってしまう。 「ねぇ、この辺りの町名板、 『旧』 って書いてあるけど、何で?」 と友人に聞くと 「あー、今は町名が変わっているからね」 とのこと。敢えて旧町名を表示しているのは何でなんだろう。面白い。友人は、こんな写真を撮っている私を面白がっていたけど。


「どこか、行きたいところある?」 と友人に聞かれ、 「飛行機とバスしか使っていないから、路面電車に乗りたい!で、長崎駅も見たい!」 と言った私。プチ鉄子モードに入ってしまったのか!?

電停 「思案橋」 から路面電車に乗って、長崎駅へ。 「 『思案橋』 っていう響き、いいねぇ」 という私に、友人は 「そう?昔から使っているから、何とも思わないけど」 だって。半跏思惟像の優しい顔が頭に浮かぶのは私だけかなぁ。
長崎駅は港の側。歩道橋から駅を見ると、後ろには稲佐山を背負っている。こんなに大きな駅が、海や山の側にあることに驚いた。駅の前の道路を渡れば、もうすぐそこには山の斜面を切り開いた住宅地。本当に鉢状の街なんだね。
その地形ゆえ、大雨の時には水害に襲われるとのこと。友人は小さい頃、車が流されるのを見て、今もはっきり覚えているそうだ。

路面電車で浜ん町アーケードに戻り、お茶をしながら、ひと休み。あー、今日もよく歩いたねぇ。もう夕方になるよ。携帯電話についている万歩計を見たいけど、一日が終わるまでのガマン。 「今日はもう疲れただろうから、お家に帰ってもらっていいよ。ひとりで帰れるし」 という私に、 「うーん、そうだねぇ。どうしようかなぁ」 と友人。
お店を出て路地散策をしていると、 「そうだ、龍馬、見る?この近くにも銅像があるよ」 とのこと。龍馬伝も見ていなかった私だが、長崎に来たからには一度ぐらい龍馬を見ておかないと、ね。観光だったら風頭公園の龍馬像が有名だが、私たちが向かったのは花街、丸山にある丸山公園。よく見る龍馬の顔よりももっとゴツゴツした顔の銅像だった。写真がないのにはワケが・・・。


この公園の近くには、友人のお母さんが住んでいる。公園のベンチに座って休んでいると、友人が言った。 「そうだ、お母さんに会っていく?」 と。 「へぇっ!?そんなぁ!お土産はホテルに置いたままで手ぶらだし、温泉入って髪もぐしゃぐしゃだし、疲れたヘロヘロ顔だし・・・云々」 「お土産なんて、無くてもいいよ」 「いやぁ、でもさぁ。急に訪ねたら悪いし、やっぱり手ぶらじゃぁ・・・云々」 「大丈夫だって」 「でも・・・云々」 。
阻止しようと必死にぐだぐだ続ける隣で、せっかちな友人は電話を掛けていた。 「今から行ってもいい?うん。じゃ、すぐ行くね」 だって。はーっ・・・。


友人の後ろをトボトボついて行くとすぐ、とあるマンションに着いた。あー、どうしよう。友人がドアを開けてお母さんを呼ぶ。そして、お母さん登場。玄関に突っ立ったままご挨拶をすると、お母さんは正座して頭を下げながら挨拶してくださり、 「遠いところ、よくいらっしゃいましたね。どうぞ、おあがりください」 と笑顔で言ってくださった。小柄でとても品のある、キレイなお母さんだ。
いやぁ、緊張したぁ!大人になってからは、友達の実家に行くなんてコト、そうそう無いもん。友人が 「これから稲佐山に行こうと思うんだけど、どうやって行くのがいいかなぁ」 と聞くと、お母さんがわざわざバスの時間を電話で聞いてくださった。あー、お母さん、友人はiPhoneだし、私も携帯電話があるから調べられるのに、スミマセン・・・と、心のなかでつぶやく。
それからお茶をいただき、いろいろお話をした。お嬢様育ちだそうだけど、本当に品のあるお母さんだなぁ。そう思いながら、友人とのやりとりをじーっと見ていたので、何を話したのかは、あまり覚えていない。 「じゃぁ、食事に行くから」 と友人が立ち上がり、私も一緒に家を出た。お母さんは、帰りも正座をして、見送ってくださった。
はー、ホント、緊張したぁー!


「もー、こういうのナシね。緊張したよー!」 という私の前をサクサク歩く友人。この階段は、お母さんの家のすぐそばの階段。友人はいつも、この階段を使っているという。うわぁ、この階段を毎日!?下の鳥居や駐車場の車が小さく見えるよ。今回は、下りで良かったわ。 「お母さん、これを上るのは大変だね」 と言うと、 「うん、だからお母さんは、あっちの坂道の方を使っているよ」 とのこと。長崎は、こんな階段や坂道だらけだもんね。 「長崎の街で、自転車って見ないでしょ?」 「そういえば、街なかで殆ど見ないかも」 「使えないんだよ、自転車。坂や階段が多いから」 「なるほどねぇ」 。昨日、Oさんも同じことを言っていたなぁ。この階段を見て、納得。


「美味しいちゃんぽんが食べたい!」 という私のリクエストで、中華街の蘇州林へ。
さっきの実家訪問で 「ちゃんぽん食べました?」 と聞かれ、 「まだなんです」 と答えた私。その場で、お母さんと友人の意見が一致したおススメのお店が、ここだった。 「今日はお休みじゃない?」 とお母さんが心配していたが、開いていてラッキー!
そして、念願のちゃんぽん。スープ、めっちゃ美味しかったぁ!東京で食べるちゃんぽんとは、やっぱり違うね。ソースをかけて食べるのは・・・皿うどんの方だっけ? 「前に、写メしてくれたちゃんぽん、ここのちゃんぽん?」 と聞こうとしたけど、止めておいた。



お店を出てから、夜景を見に、稲佐山に向かった。とあることで、車を廃車にしてしまった友人。車で行くことができないため、バスで向かった。こんな夜に、バスで向かって大丈夫なのか?
まぁ、いろいろあったけど、無事に展望台に到着。
素晴らしい。 「うわぁー!」 としか、言葉が出ない。日本三大夜景と言われる函館、神戸、長崎。どの港町の夜景も実際に見たが、私の中では長崎がいちばんだ。光が近いからか、計画的に作られていないからか、とにかく素晴らしい。友人はもう何十回も女性と一緒にここに来た、と憎たらしいことを言っていた。カップルでここに来ると別れる、と言われている場所らしい。おいおい、カップルだらけの場所で、そんなことを大きな声で言うなよぉ!
伊王島の展望所でもそうだったが、目の前にこういう景色が広がると、頭の中が空っぽになる。自転車を漕いでゼーゼー言ったことも、階段を上ってゼーゼー言ったことも、お母さんにお会いして極度に緊張したことも、全てが一瞬にしてこの光に包まれ、柔らかく溶けていくようだ。友人も私も、殆ど会話することなくずっと、この景色を眺めた。


あー、来て良かったぁ。今日の終わりも、そう思えた幸せ。