長崎のんびり旅行 3日目・・・10,183歩


昨夜から、雨。しかも、かわいい雨ではなく、暴風雨。あー、昨日のうちに稲佐山に行っておいて良かったねぇ。今日も明日も雨の予報だもんね。折りたたみ傘は持ってきたけど、差した途端にエビ反りだなぁ、こりゃ。長崎は、しとしと雨じゃないん?
あまりの暴風雨に、友人を連れ出すのも申し訳なく、今日はひとり行動をすることに決めた。この時期にこんな暴風雨なんて滅多にないよ、と地元の方が言っていた。これは、運がイイのか悪いのか。
さぁ、今日はどんな一日になるのかな。路面電車の路線と乗り方は昨日、友人にしっかり聞いておいたし、観光地だから親切な案内看板も多いし、大丈夫でしょ。ホテルの最寄駅、大浦海岸通から出発!



最初に向かったのは、平和公園
電車を降りて公園の長い階段を歩いている間に、既に足はびしょ濡れ。平和祈念像の前に立った時、そこには私と他の観光客3人しか居なかった。あらら、写真って、雨は写らないのね。足元は、水たまりだらけだったんだけど。
『右手は原爆を示し左は平和を 顔は戦争犠牲者の冥福を祈る 是人種を超越した人間 時に仏 時に神』 とは、平和祈念像作者の言葉。
びしょ濡れだったけど、静かな日に来られて良かったのかもしれない。


平和公園から、浦上天主堂に向かう時に下った階段。
ここは長崎刑務所浦上刑務支所があった場所だそうで、今でもこの辺りには、原爆投下当時の壁の一部が残っている。案内看板を見ながら、ゆっくりと石段を降りた。
全く人の居ない、静かな静かな時間。雨の音だけが、時が止まっていないことを教えてくれる。
雨の長崎もいいね。


道の途中にある案内板だけを頼りに、浦上天主堂に向かった。観光客らしき人は、殆ど見られない。一人でテクテク歩く私自身、観光客に見えていないだろうなぁ。暫く歩くと、正面にレンガ色の天主堂が見えてきた。
雨の大浦天主堂。教会内にあったパンフレットや敷地内の案内板で、悲しい歴史を知る。
教会内に展示されていた、被爆マリア。何というお顔。瞳の無い、真っ暗な目。悲しく、切ない。このマリア様がここに戻って来たことは奇跡なのだろう。少し高い位置に展示されていることで、よりその表情は切なさを増して見える。この場から動けなくなりそうだ。


敷地内のマリア様。
よく手入れされた植栽とマリア様。植栽剪定からは和を感じるのに、そこにマリア様が立っているのが何とも不思議だった。雨の中のマリア様は、とても美しかった。
小さな小さな売店に行ってみると、ポストカードが並んでいた。被爆マリアのカード以外は殆ど、原爆直後の浦上周辺の画ばかりだった。建物は崩れ、焦土の町には被爆した人たち。大震災直後の田舎の様子と重なり、とても見ていられなかった。立ち寄る人もいない売店の中には、ひとりのシスターがいた。きっと、私の亡くなったおばあちゃんよりもずっと年上だと思われるが、とてもきれいな、優しい顔をした方だ。
被爆マリアのポストカードを数枚、手渡したところ、1枚ずつ袋に入れてくれた。ゆっくり、ゆっくりと丁寧に。その手元をじっと見ている時、ポストカードを見て感じたことが自然と言葉になって口から出てきてしまった。お話をするつもりはなかったが、自然と口から。この会話の時間は、海の底で会話をしているようだったなぁ。穏やかで、静かで、すごく心地良かった。雨音のせいなのかな。
シスターは最後に、 「お祈りしています」 とおっしゃってくださった。有難くて、泣きそうになった。この雨の日に、ここに来て良かった。心からそう思った。



長崎市の花は、アジサイ
浦上天主堂からの帰り道、街路樹の足元には、こんな可愛らしいアジサイが並んでいた。雨水とアジサイ、なのかな?
そして、長崎県の花は雲仙ツツジ
このアジサイのように、雲仙ツツジの模様もあった。
アジサイと雲仙ツツジが交互に並ぶ可愛らしい道を、ひとり静かに歩いた。


足元ばかりを見て歩き、松浦町で信号待ちをしていたとき、この風景に出会った。
小さな川にかかる橋。十字に抜かれたデザイン。大きな大きな柳。
この辺りの町の歴史を感じる、素敵な風景だった。

浦上天主堂を後にし、また路面電車に乗って、諏訪神社へ。長崎くんちの、あの諏訪神社だ。案の定、参道には人ひとりいなかった。そうだよねぇ、雨も風も、どんどん強くなってきているもの。服もバッグもびしょびしょだ。

貸し切り状態の諏訪神社境内。その入り口に立って、鳥居と長々と続く階段を見上げる。なんて立派な神社なんだ!
鳥居をいくつくぐって、階段を何段上がれば、拝殿に辿り着けるのだろう。先が全く見えないもんね。
とにかく行くしかない。


立派な神社だと、狛犬も大きくて立派だね。雨と風の中、大きな大きな狛犬を1枚の写真に収めるのは、大変だった!
狛犬の間に立って、 「あ」 「うん」 と声に出してみた。目が合ったそれぞれの狛犬に笑われたような気がした。
諏訪神社のHPには 「狛犬散歩道」 というページがあるほど、いろんな狛犬がいる。あ、カッパ狛犬もいる。遠野で見たカッパ狛犬を思い出して、ひとりニヤリとしちゃった。
さぁ、拝殿まではまだまだ階段を上らないと!


やっと辿り着いた拝殿。大きくて、やっぱり立派だった。
風がもの凄い勢いで吹いていて、傘が飛ばされそうになる。そんな中、七五三の衣装を着た男の子と、その両親が帰る場面に遭遇した。記念写真を撮りたいようだが、風が強くてなかなか上手くいかない様子。ママはキャーキャー言っていたが、男の子の方は、その状況すら楽しんでいるようだった。きっと大物になるよ、君。元気に大きくなるんだぞー!
その親子が帰ると拝殿前は私ひとりになったので、静かにゆっくりお参りすることができた。さっきまでマリア様を見ていたのに、今は拝殿前で手を合わせる。そんな街、長崎。


狛犬の写真も拝殿の写真も、雨風が凄い!ということが伝わらないじゃないか。曇りの日に見えるもんね。
お守りを買って、おみくじを引いて、屋根の下でデジカメを覗きながら、そう思った私。うーん、こんなにずぶ濡れなのに、何となく悔しい。どこか、悪天候が伝わる景色はないのか!?
境内を散策していると、あった!噴水だ。今ではいろんな公園で見かける観賞用の噴水だが、この境内にある噴水は、それの噴水の最古のものだそうだ。ほらね、天辺が風に吹かれてグイーンと曲がっているもん。あー、無事に記録できて良かった。

諏訪神社には 「縁結びの陰陽石」 という敷石があるそうだ。この石のことを、拝殿で知った私。予習してから行かないと、こういう時にガッカリだ。もう、下に戻ってまた上がってくる元気は無い。帰りながら、それぞれの石を見て 「あーぁ、この石なのね」 と思うしかなかった。残念だなぁ。次に来た時は必ず、男石を踏んでから拝殿に向かうことにしよう。


電停で、 「さぁ、次はどこに行こうかな」 と思ったと同時に、 「お腹が空いたなぁ」 とも思った。うーん、ひとりだと、どこで食べたらいいかも分からない。そうだ、Oさんに聞いていたお店に行こう!急いで携帯電話で場所を調べ、浜ん町アーケードを目指した。あらら、毎日行ってるね、アーケード街。

Oさんおススメのお店、吉宗。初日、Oさんと友人が、このお店のことを話していたねぇ。下足番がいるお店だって。
アーケード街にも面したお店だが、正面はこちら。店構えがイイねぇ。寄席に来たみたいで、ウキウキする。
傘を差したままお店を眺めていると、お客さんがどんどん入っていく。観光客も、地元のお昼休みの人も。混んでいそうだけど、入れるかなぁ。心配しながらお店に入ると、1階のいちばん奥の席に案内された。あー、良かった。


これが、吉宗自慢の茶碗むしが付いた定食。長崎の角煮も食べたかったので、この 『吉宗定食』 にした。
このお店の名前は、吉宗と書いて 「よっそう」 と読む。Oさんに教えてもらった時は文字情報だったので、まさか 「よっそう」 だなんて思ってもいなかった私。どこもかしこも 「吉宗」 って漢字で書いてあるんだもの。お店の方がオーダーを取りに来た時も、 「ヨシムネ定食とビールの中瓶ください」 とお願いした。お店の方は聞き返すこともなく、オーダーを通してくれた。オーダー後、ふと目をやった楊枝入れに、ひらがなで 「よっそう」 と書いてあるのを見た瞬間、凍ったなぁ。きっと、観光客の10人に3人ぐらいはヨシムネって言うんだ!そう思いたい。あー、恥ずかしい。。。


この、茶碗蒸しのどんぶり、欲しかったなぁ。お味はもちろん、美味しかったー!小鉢は殆どビールのおつまみになってしまったので、 「さぁ、食べるぞ!」 と思った時には、ご飯と茶碗蒸しだけになってしまっていた。それでもやっぱり、美味しかったなぁ。スペシャルな具材が入っているわけではないけど、お出汁が美味しいんだろうね。満腹なはずなのに、ツルツルとお腹に入っていく。Oさんに感謝!
お隣のテーブルは、地元の奥様三人組。長崎の言葉で、途切れることなく話し続ける。地元の言葉って、優しくっていいなぁ。ひとりでビールを飲みながら、その響きを楽しませてもらった。


あまりにも雨と風が凄いので一旦、ホテルに戻ることにした。昨日も一昨日も、この辺りからホテルに戻る時は歩いていたが、今日は電車で、ね。ころんとした小さい車両、丸みがあって可愛らしい。観光地らしく、運転士さんの車内アナウンスも、乗り換えの方法まで説明してくれて親切。いいなぁ、街にこんな路面電車が走っているなんて。東京でも復活しないかなぁ。



ホテルに着くとすぐ、友人から連絡が入った。 「いま、どこにいるの?」 と。最後の夜だから、ご飯は一緒に食べたいなぁ、と言っていたから。
私ひとりでも行ける場所で待ち合わせをして、友人の知っているお店に連れて行ってもらった。このお店、何を食べても美味しかったぁ!また行きたいなぁ。くねくね歩いて到着したお店なので、長崎素人の私にはイマイチ場所が分からん・・・。


お酒を飲みながら、いろんな話をした。昨日も一昨日も会ったのにゆっくり話せなかったこと、報告したかったけどずっと言えずにいたこと、どうでもいいこと、とにかくいろんなことを。だって、次はいつ会えるか分からないんだもん。楽しいというよりも、寂しい気持ちの方が大きいなぁ。黙ってしまうと寂しい気持ちが言葉になって出てきそうな気がして、とにかくしゃべりまくる私。
「遠いねぇ、東京と長崎って」 と何度も言ってしまった。言わないようにしていたのに、つい出てしまう。 「うん」 とだけ返事をする友人。東京にいたときは、 「夜ミー (ミーティング) しない?」 と言えばすぐに会って、一緒にお酒が飲めたもんね。
最後の夜って、やっぱり寂しいね。