手術前の準備…リュープリン2回-19日目

なんだか毎日、どんどん落ちていく気がする。気のせいだ、気のせいだ、と思いながらも落ちる気がしてならない。
そりゃぁ、生きていれば良いこともあるし、悪いこともある。楽しいこともあるし、辛いこともある。
どうやら私は、リュープリンについて調べすぎたようだ。
マイナス思考になると「副作用の鬱かも」という思考回路に入ってしまい、なかなか抜け出せない。リュープリンを打っていなかったら、ただの「悪い日」で終わっていたであろう一日が、とてつもなく濁った暗い一日に思えてならない。


今日、夕方から3時間の無意味な会議を終えた時には、そのマイナス思考にどんどん入って行ってしまっていた。無意味な、と言ってしまうこと自体、ダメダメ思考の証なのだろう。
実際、会議中もホットフラッシュが何度も襲い、腰痛のために会議中に隠れてロキソニン飲む自分が、本当に嫌になっていた。


「こんな状態ではいかん!」と思い、仕事が終わってから、よく通っていた飲み屋の大将に差し入れを持って行くことにした。
その飲み屋は美味しくて人気が出てきたため、今はなかなか予約も取れず、突然行っても席に着くことはまず無理だ。
リュープリンを打ってからは酒を飲んでいないため、大将に会うのは数ヶ月ぶりだ。飲むことが目的ではなく、会って立ち話をすれば満足!という気持ちでいたので、店員分のスウィーツを買って店に向かった。


相変わらずびっしり埋まっている店内。大将の顔と一緒に、見慣れた顔が目に入った。その店に通っていた頃の飲み仲間の奥さんだ。私が知らない人たちと一緒のようだ。
見付かると面倒くさいので今日はあきらめよう、と思った瞬間、聞き覚えのある声が聞こえた。「おーっ!いまメールしようと思ってたんだよ!俺らが居るってニオったか?」と。
その声は、元同僚=大好きな飲み仲間たちだった。気付かなかったが、テーブルには奥さんだけじゃなく旦那さんも居たのだ!うしろ姿だったから気付かなかった。
禁酒してるから、と断ったが、その場の空気で席に着かざるを得なかった。


席に着くなり、飲み仲間のひとりに「嫁さんの腹、見て」と言われた。見るとぽっこり出たお腹。待望のお子ちゃまができたそうだ。現在、妊娠7ヶ月。奥さんはとても幸せそうな笑顔で「7月出産の予定なんです」と言い、嬉しそうに色々話してくれた。
私の誕生日も7月だよ!とか、良かったねぇとか、つわりは大丈夫だった?とか、笑顔でお決まりの会話を交わしつつ複雑な心境の私がそこに居た。


私はその1ヶ月前の6月に手術予定だ。リュープリンを打つ人は妊娠厳禁だ。去年の11月に大きい子宮筋腫が見付かり、手術を決め、リュープリンを打つことを決めてからは、自分が女性でなくなっていくような気がしてならなかった。
結婚しているわけではないが、妊娠厳禁、手術後も妊娠し辛くなるのではないかという不安、年齢的な出産タイムリミット、など諸々考えると、女性としての人生が終わったようで頭がおかしくなりそうだった。


もちろん、彼女の妊娠はとても嬉しい。
だが、心のどこかでそれを羨ましがっている自分や、自分の状況を不幸に思う気持ちや、将来が不安でたまらない気持ちや、そんなこんながドロドロと渦巻いていた。
また、そう思っている自分がみじめで、とても嫌だった。
私も入れて7人居たが、私の子宮筋腫について知っているのはひとりしか居なかったので、アルコールを飲むしかなかった。酒好きな私が禁酒なんかする筈がない、と言われる始末。ジョッキビール2杯と酎ハイ2杯しか飲まなかったが、これだけで酔いそうだった。
幸せ妊娠カップルの前で「子宮筋腫で手術するんだ」なんて言えないし。


こういう時期に限って周りから、子供が生まれたとか妊娠が分かったとかいう報告が次々に入り、私は勝手に凹む。
出産で義姉を亡くしている私には、無事に子供が生まれることがどんなに大変なことでどんなに幸せなことか分かっている。
それなのに、「良かったね!」と口にする度に「心からそう言えているのか?」と問う自分も居て、本当に自分が嫌いになる。
出産報告も妊娠報告も、いまはできれば聞きたくない。心から嬉しくて、とてつもなく辛いからだ。
そうか、私はミザントロピィなんだよな、と確認した夜。
いまの私は偽善者で嫌なヤツだ。


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